『ウェビナー報告日誌 2023「GP Road Map」編 vol.5 ― 高齢者ケア ―』

 

オーストラリアにおける総合診療の第一線で長年にわたり活躍されてきたロナルド・マッコイ先生から、「総合診療の原則」について体系的かつ実践的に教えていただく『GP Road Map』。

 

今回のテーマは「高齢者ケア」。高齢化の進む日本社会にとっても非常に重要な医療を題材とした講義が行われることとなりました。

 

 

 

 

以下に、今回の講義から内容を一部抜粋してご紹介します。

 

 


 

高齢者ケアにおけるメンタルヘルスケア ①

 

65歳以上の「うつ病」や「不安」

 

 

 

  ・非常に一般的(日本人のおよそ33%)

 

 

  ・時折、認識が困難に - 症状が老化(加齢)に似た症状になることもしばしば

 

    └ 高齢者の臨床的うつ病は、老化の問題とは区別して治療されるべき

 

    └ 説明のつかない身体的症状、記憶喪失、様々な行動変容がみられる

 

    └ 奇妙な症状を呈することもある

 

    └ 認知症または精神病と誤診される可能性がある

 

 

 

 

 

「激越型うつ病(不安と混在)

 

 うつ病の中でも、高齢者に最も頻繁にみられるタイプ

 

 

 主な特徴

 

   └ 性格異常行動(芝居じみた)

 

   └ 妄想、思考障害

 

 

 

高齢者のメンタルヘルスケア ②

 

「うつ病」と「認知症」

 

 

  ・気分の低下(心理社会的問題、孤独、孤立)の原因となっている

   要因の解消に努める必要がある

 

 

  ・「高齢であるために治療の有効性が劣る」ということはない。

    投薬治療は有効。ただし、投薬量には要注意。

 

 

  ・適切な治療や管理によって改善・回復が可能

 

 

 

 

 

備考:

 

 ・投薬治療を行う際には、より「少量」の投与から始め、必要に応じて

  徐々に増やしていくことが重要。

 

 

 ・うつ病の治療と同様に、患者個人に特有の特徴や原因、生活のストレスへの

  配慮・対応を行うことが最も効果的な治療となりうる。

 

 

 ・高齢者のうつ病は「認知症」と混同・誤診されやすいため、

  適宜「うつ病評価スケール」を用いることが推奨される。

 

 

「うつ病」と「認知症」の鑑別について

 

 

「ミニメンタルステート検査(MMSE)

 

 

「うつ病」と「認知症」とを鑑別するための手段として、簡易的なスクリーニング検査の実施はとても有用。いつでもすぐに実施できるよう準備を整えておくのが吉。

 

数多く存在するスクリーニング検査の中でも「ミニメンタルステート検査(MMSE)」、とりわけ「Folstein MMSE」は推奨される検査として広く用いられている。

 

 

 

 

 

▷「高齢者うつ病スケール(Geriatric Depression Scale)」との併用

 

 

「MMSE」のスコアが「14」を超えた場合には、「高齢者うつ病スケール(Geriatric Depression Scale)を併用することで、より効果的な鑑別診断を行うことも可能に。

 

多言語対応しており、こちらからダウンロードが可能。日本語版の信頼性は高く、所要時間も5~10分程度と短い。

 

 

 主な特徴

 

   └ 感度の範囲(79~100%)

 

   └ 特異度の範囲(67~80%)

 

   └ ミニメンタルスケールのスコアが「14」以上の場合に使用

 

   └ 〇の数を合計してスコアを算出

 

   └ 各〇は1点。「5点」以上はうつ病の可能性あり

 

   └ 日本語版の信頼性は高い

 

 

 

 

備考:

 

 

・「記憶障害」は「認知症」を示す唯一にして最も明確な兆候。ただし、その評価(検査)に関しては、正式な記憶力テストをもって行われるべき。

 

・「うつ病」と「認知症」を鑑別することは、高齢者ケアにおいて特に重要な診断的課題となり得るため、適切に両者を鑑別できる能力はジェネラリストにとっても重要なスキルだと言える。

 

・「うつ病」は治療可能な症状であるため、見逃さないことが重要。

 

 

「ガイドライン」や「評価スケール」の活用

 

 

「RACGP Sliverbook

 

 └「老人ホームや自宅介護における高齢者ケア」に関するガイドライン。

   高齢者ケアに関するあらゆることが説明されている。ダウンロードはこちら

 

 

 

「Mini-mental state examination template 

 

 └ 上述の通り、うつ病の鑑別に有効。日本語版(MMSE-J)についてはこちら

 

 

 

「Comprehensive health assessment of the older person in health and aged care (Template)

 

 └ 高齢者の健康と高齢者ケアの総合的な健康評価に関するテンプレート。

   ダウンロードはこちら

 

 

 

 

 


 

 

講義終盤に設けられた質疑応答の時間では、“高齢者ケアあるある”とでも言うべき「実際の臨床で頻繁に遭遇する対応に困る事例・症例」を題材に活発なディスカッションも。

 

オーストラリアでも「患者」というものの在り方に大差はなかったようで、研修生方の質問に対する的確な、経験に裏打ちされたロナルド先生の助言の光る時間となりました。

 

 

 

 

 

 

 

The GP Road Map, one of our regular monthly webinar for doctors aiming at enhancing their skills and knowledges as GPs, was successfully conducted, the other day again.

 

The theme for the lecture was “aged care”, which has recently been really important healthcare for any highly aging society, as well as Japan.

 

 

 

By the way, the Q&A session was held at the end of the lecture as always.

 

Then, the registrars shared ordinary cases with Dr. McCoy, where they had been struggling to cope when they see Japanese elderly patients.

 

In fact, Dr. McCoy had already experienced such “problems” among his long life as a doctor even in Australia, so he sympathizingly shared practical tips and advises with the registrars.

 

 

 

Interestingly enough, “things patients do” seemed to be more or less universal.

 

 

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA