『ウェビナー報告日誌 2023「GP Road Map」編 vol.3 ― 慢性疾患と慢性の病いの管理 ―』

 

GPとしての長年にわたる研鑽に加え、指導医としての豊富な経験を持つロナルド先生から「総合診療」について体系的に学ぶためのウェビナー『GP Road Map』。

 

今回の講義では「慢性疾患」と「慢性の病い」という似て非なる疾病を題材に、その管理や治療の方法や方針などについて教えていただきました。

 

 

 

 

 

 

以下に、今回の講義から内容を一部抜粋してご紹介します。

 

 


 

「慢性疾患」と「慢性の病い」

 

慢性疾患

 

身体への影響が長期にわたる疾患、の総称

 

 

 【 定義 】

 

  医学的な管理は必要とするものの、日々の生活に大きな影響はない

 

  └ 例)高血圧、等

 

 

 

 

慢性疾患

 

疾患の存在や蓄積、および(あるいは)支援、機能維持、更なる身体障害の予防のためのあらゆる人的環境(人間関係)における障害、の総称

 

 

 【 定義 】

 

  患者の「身体的・社会的・精神的に良好な状態」や「日常的な動作」に影響を及ぼす

 

  └ 例)関節リウマチ、等

 

 

 

備考:

 

「慢性疾患」は時として安定することもあるが、「慢性の病い」は悪化の可能性がある。

 

 

 

「コミュニティ・エフェクティブネス」の活用

 

「コミュニティ・エフェクティブネス」とは

 

医療サービスにおけるすべての段階において、どのように改善できるかを測定・評価する手法のこと(全部で5段階が設定される)

 

 

 

1.治療の有効性

 

 

 【 意味 】

 

  想定される治療の効果はどれほどか?

 

 

 

 【 Rural Generalistの役割 】

 

  ・根拠に基づいたガイドラインの適用

  ・根拠に基づく医療の実施

 

 

 

 

2.スクリーニングおよび診断の精度

 

 

  【 意味 】

 

   スクリーニングおよび診断の正確性は?

 

 

 

  【 Rural Generalistの役割 】

 

   ・精確なスクリーニングおよび診断の実施

 

 

 

 

3.医療従事者のコンプライアンス

 

 

  【 意味 】

 

   医師は質の高いケアを追求しているか?

 

 

 

  【 Rural Generalistの役割 】

 

   ・実施している治療の質の見直し

 

 

 

 

4.患者のコンプライアンス

 

 

  【 意味 】

 

   患者はきちんと服薬しているか?

 

 

 

  【 Rural Generalistの役割 】

 

   ・服薬指示に対する遵守の改善

   ・自己管理に関する患者の教育

   ・患者主体のケア、多職種によるケアの実施

 

 

 

 

5.医療サービスの適用範囲

 

 

  【 意味 】

 

   医療サービスは存在しているか?

   住民はそれを知っているか?

   患者はそれらのサービスを受けられるか?

 

 

 

  【 Rural Generalistの役割 】

 

  ・患者がサービスを受けられる環境の実現

   (マーケティングの実施、へき地サービスの提唱、等)

 

 

 

 

 

☆ コミュニティ・エフェクティブネスの考え方

 

 

 例:とある地域における「高血圧症」の場合

 

 

  A.治療の有効性=76%

 

  B.スクリーニングおよび診断の精度=95%

 

  C.医療従事者のコンプライアンス=66%

 

  D.患者のコンプライアンス=65%

 

  E.医療サービスの適用範囲=90%

 

  F.コミュニティ・エフェクティブネス=28%

    (計算式:A✕B✕C✕D✕E)

 

 

【コミュニティ全体での達成率】=37%(計算式:A÷F)

 

 

 

 

 

解説:

 

上記の例における治療の有効性は「76%」。また、診断については「95%」と高い精度を誇るものの、残り5%の高血圧患者は見逃していることになります。そして、高血圧が発覚した患者のうち「66%」だけが診療所で治療を受け、さらにそのうち「65%」の患者だけが正しく薬を服用。一方、地域内でのサービスはよく行き届いており、地域の「90%」をカバーしている模様です。

 

 

そういった諸々が積み重なった結果、本来は「76%」だったはずの有効性も、このコミュニティにおいては「28%」にまで減じてしまっている、ということが分かります。

 

言い換えれば、有効性「76%」の治療を実施したとしても、このコミュニティ全体において達成された効果はわずか「37%」でしかないことになります。

 

 

 

ただし、例えば仮に「診療所を受診する患者」と「正しく服用する患者」との割合をともに「90%」にまで改善できたならば、コミュニティ・エフェクティブネスは「28% ⇒ 53%にまで向上し、地域全体における達成率も「37% ⇒ 70%にまで改善される余地がある、ということでもあります。

 

つまり、この例に関して言えば「優れた医師」であることとは、「高血圧の患者を見逃さず」に、「確実にガイドラインに従いつつ全員に薬を処方」した上で、さらに「患者が正しく薬を服用しているかをチェックする」ことだと言えるでしょう。

 

 

 

「SNAPガイドライン」の活用

 

「SNAPガイドライン」 by RACGP

 

慢性疾患のケアにおいて重要な役割を果たす「生活習慣の管理」については、RACGPによる「SNAPガイドライン」がとても役に立つため、積極的に活用する。

 

 

 

「参考文献」の紹介

 


 

 

講義においては、一見すると混同してしまいそうになる両者の違いを「定義」や「特徴」などの客観的な事実を切り口に、その違いを分かりやすく提示されたロナルド先生。

 

それらを踏まえた上で「どのように管理・治療に臨むべきか」「何故そうすべきか」という、実際的な課題に対する実践的かつ実務的な助言と注意喚起には、研修生方も大いに学ぶところがあったようでした。

 

 

 

 

 

 

 

Thankfully, we were able to host the GP Road Map, the one of our regular monthly webinars, again this month.

 

 

As a matter of fact, the session focused on chronic disease and chronic illness.

 

Although the two are actually similar to and different from, Dr. Ronald McCoy, as always, systematically lectured about not only the differences between them but also the differences in how doctors should deal with them respectively.

 

 

 

As a starting point, he began with providing a comparative analysis of the two from the OBJECTIVE perspective of its definitions or diagnostics, in the session. 

 

And then, Dr. McCoy, with that in mind, gave the registrars practical-minded advices and heads-ups in managing them from the SUBJECTIVE perspective that had been bolstered by his long experience.

 

 

The session seemed to be very fruitful for the registrars again, thankfully enough.

 

 

 

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