『ウェビナー報告日誌 2023「GP Road Map」編 vol.1 ― 外来診療を乗り切るためのコツ ―』

 

総合診療医として豊富な経験を持つオーストラリア人のベテラン指導医、ロナルド・マッコイ先生から「総合診療」について実践的かつ体系的に学ぶ『GP Road Map』。

 

先月より全国各地の病院にて研修が開始された『Rural Generalist Program Japan (RGPJ)』、その ”第7期” における初の定例ウェビナーとなった今回。

 

 

『外来診療』をテーマに押さえておきたいポイントやコツ、心得などについて、いつも通り丁寧かつ分かりやすく講義していただきました。

 

以下に、一部内容を抜粋してご紹介いたします。

 


 

診察に重要な「ICE」

 

ICE

 =患者の受診理由を適切に尋ね、正しく理解する上で重要となる質問モデル

 

 1.Idea(解釈モデル)

   「何か原因がありそうですか?」

 

  ☆患者自身の「現在の症状・状態に対する理解・解釈」を把握する

 

病気や身体のことに関して、とても不思議な解釈をしている場合や、文化的な背景に基づいた考えを持っている場合などもあるため、「患者自身の理解・解釈」について質問することは有効。

 

 

 2.Concerns(気になっていること)

   「特に何が気になっていますか?」

 

  ☆「患者の抱いている不安や心配」について探る

 

時に、医師が想像もしないことを気にしている場合などもあるため、その「気になっていること」に対応・対処しない限り、患者からの満足を得ることは難しい。

 

 

 3.Expectations(診察に期待していること)

   「今日の診察で何をしてもらいたいですか?」

 

  ☆「患者が真に何を求めているのか」を正しく理解する

 

「医師が考えもしなかった理由」や「非常に単純な理由」などで受診する場合もあるため、症状や病気だけに重点を置いた診療では、患者の期待に応えることが難しくなってしまう点に要注意。

 

 

患者の「受診理由」を理解する

 

 「隠れた受診の動機」は、よくあること!

 

   ・「他に話したいこと」がないか尋ねる

 

   ・「思春期」「中年男性」「高齢者」に多い

 

最初に明らかにした理由とは異なる「真の受診目的・動機」を抱いている患者は決して少なくないため、診察の中で「隠れた真の受診動機」を引き出すことが重要。

 

この質問を行うことで診療時間が長くなることはなく、むしろ時間の短縮に繋がる場合が多い。

 

 例)

 

   「他に何か話しておきたいことはありますか?」

   「他に診察してほしいところはありますか?」

 

 

備考:

 

診察の冒頭でいきなり上記のような質問をしても、患者側の考えがまとまっていないなどの理由から「隠れた動機」を引き出すことは難しいため、診察がある程度進んでから質問する方が好ましい。

 

 

情報の再確認

 

 患者は「正確に話を聞いてほしい」もの

 

   ・聴取した情報を整理しながら患者に伝えるのが大事

 

   ・詳細の再確認に役立つ

 

   ・「話をよく聞いてくれている」という安心に繋がる

 

   ・患者が何度も同じ話を繰り返さなくなる

 

 

聴取した情報を要約し、再確認しながら患者に伝えつつ、記録にも残すことで「診療時間の節約」にも繋がる。

 

 

備考:

 

情報の再確認を行っている間は、電子カルテに記録しながら話したりしても許される時間と言える。

 

 

「システムレビュー」の実施

 

システムレビュー(ROS):事実をもれなく集める

   

問診で聴取した情報の再確認を終えたら、システムレビュ―(ROS)を行う。患者が気づいていない異常がないかを、総合的に診察していく。

 

  例)主訴:「膝の痛み」

    膝に絞った診察 ⇒ 原因が他の部位に由来していれば、その部位を診察 

 

 

備考:

 

・ROS:Review of System

 =患者が自覚していない症状を拾い上げるための時間(レビュー)

 

・医療ミスの原因は「知識不足」よりも「診療不足」によることが多い!

 

 

安全のための「5つの質問」

 

 1.「頻度の高い疾患」は何か?

 

  例えば「胸痛を訴える30歳の男性」の場合、頻度の高い疾患は「筋肉痛」

 

 2.「見逃してはならない重大な疾患」は何か?

 

  例えば「心筋梗塞」の可能性は、確実に除外しなくてはならない

 

 3.「見逃しやすい状況はどんな場合」か?

 

  一つの問題点のみに着目すると、重大な疾患を見逃してしまう危険性あり

 

 4.「症状が表出していない可能性」は?

 

  「糖尿病患者」の場合、心筋梗塞を起こしても胸痛を感じにくい、など

 

 5.「患者は何を伝えようとしている」のか? 

 

  前述の「ICE」を活用した質問を励行する

 

 

上記の質問を自己確認することで、「重大な疾患を見逃す可能性」の低減が可能。

 

 


 

なお、第7期生にとって初めての本格的なウェビナー、しかも全編にわたって英語のみということもあってか、講義の冒頭では緊張した面持ちも目立ったものの、それも長くは続かず。

 

ロナルド先生の気さくな振る舞いや、齋藤先生によるサポートなどにより、すぐにリラックスして講義に集中することができていたようでした。

 

最後に設けられた質疑応答の時間でも、研修生方からは活発に質問や意見が寄せられることとなり、これから約10ヶ月に及ぶウェビナー全体にとっても、よい ”幕開け” となりました。

 

 

 

 

The GP Road Map, one of the series of RGPJ(Rural Generalist Program Japan) webinars for any GPs in the making by Dr. Ronald McCoy, was successfully conducted the other day.

 

Actually, that was the very first session of not only GP Road Map, but also whole 10-months regular monthly webinars; the “practical tips for surviving the general practice consulting” was the main theme.

 

Honestly, every registrars seemed more or less nervous at the beginning of the session, but it should be no surprise when we imagine the registrars’ anxiety against the specialistic lecture fully only in English.

 

Dr. McCoy is, however, indeed a veteran both in general practice and tutelage of young doctors.

 

So, every registrars freed themselves from nervous immediately and goodly focused on the session, thanks to his gentle, companionable character. Witty asides by Dr. Manabu Saito seemed to contribute to it, too.

 

Anyway, everyone had eventually been able to participate in the session proactively and mark a good start of the webinars.

 

 

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