『ウェビナー報告日誌 2023「Registrar’s Lecture」編 vol.4 ― 糖尿病診療 ―』

内容や形式に囚われず、その時々で「研修生の成長に繋がる」講義や発表の場などを提供するためのウェビナー『Registrar’s Lecture』。

今回は、ご自身も「第5期生」として『Rural Generalist Program Japan(RGPJ)』に参加された堀井 三儀先生が講師となり、「糖尿病」や「内分泌科」についての講義が行われることとなりました。

以下に、今回の講義から内容を一部抜粋してご紹介します。


糖尿病①:初診外来のコツ

伝え方・話し方が大事

 ・初診外来は患者さんと糖尿病の出会いの場。

  曖昧にせず、でも脅さず、ストレートに「糖尿病」と伝える

  

  例)検査結果からは「糖尿病」の診断になります。

  NG)糖尿病の気がありますね  /  ちょっと血糖値が高いですね。

 ・一番伝えてほしいことは、「通院を継続する必要がある」ということ。

 ・二番目は、「生活習慣だけが原因ではない」ということ。

  年齢、遺伝的要因など、生活習慣以外にも複合的な要因が重なって生じる。

  

備考: 

 ・初診では、患者に「責められているように感じさせない」ことが特に大事。

糖尿病②:患者に確認すべきこと

自覚症状

   └ 高血糖に伴うもの - 口渇、多飲、多尿、体重減少、易疲労感

   └ 合併症を疑うもの - 手足の感覚障害、しびれ、視力低下など

過去の健診結果、糖尿病の治療歴

体重歴

  └ 20歳時の体重、過去の最大体重とその年齢、体重推移とその理由

家族歴

  └ 糖尿病がある場合は治療内容合併症、亡くなっている場合は死因を

生活歴

  └ 職業、通勤方法、生活背景(独居か同居か)、飲酒・喫煙

備考: 

 初回の外来で全部を訊かなくてもいい

 

   └ 患者に継続的に通院してもらうことが前提

 ・「尋問」になってしまわないように気を付ける

 ・いま困っていること(自覚症状)がないかを尋ねる

 ・長らく放置された糖尿病(健康放置・治療中断)ではなさそうか

糖尿病③:検査項目

初診時のおすすめ検査項目

  ・血糖値(空腹じゃなくてもよい)

  ・HbA1c

  ・グリコアルブミン(GA)※場合によっては

  ・尿糖

  ・尿ケトン体

  ・尿蛋白

  ・血中Cペプチド

  ・抗GAD抗体 ※1型糖尿病を少しでも疑ったら

備考: 

HbA1cと併せてグリコアルブミンの数値を検査する意義としては、「本当にこの数週間とかの短いスパンで急激に悪化した糖尿病かそうじゃないか」を判別・確認するため。あるいは、患者の貧血が酷くてHbA1cの値が参考にならない場合なども。

代謝失調や合併症の有無の判別に役立つため、尿ケトン体と尿蛋白は重要。尿を検査するときは必ず確認すべし。

糖尿病④:治療方針

堀井先生流・大まかな治療方針

 ・HbA1c  7% 未満 - 生活指導

 ・HbA1c  8% 未満 - まずは生活指導。改善しなければ薬物治療を考慮

 ・HbA1c  8 – 10% - 生活指導+薬物治療がおすすめ(患者の反応次第)

 ・HbA1c  10%以上、尿ケトン陽性 - 薬物治療(インスリン)、紹介/入院を考慮 

 ・ケトアシドーシス ー 紹介 / 入院

備考: 

「HbA1c  8 – 10%」のとき、「まずはとにかく生活改善から治療を始めたい」と主張する患者に対して無理に薬物治療を進める必要はない、という意味で「患者の反応次第」。

ケトアシドーシスまで至っている場合には、専門医(専門機関)への紹介が推奨されるものの、それが許されない環境・状況であれば、まずは入院させてインスリン治療を始めた方がよい。

糖尿病⑤:生活指導

「生活指導」とは?

 ・患者に「自分でここを変えよう」と考えてもらうことが基本

 ・まずは本人の提案を次回まで実行してもらう(微妙な内容でも)

 ・患者の提案を具体的な形に落とし込む

  例①)

    └ 患者:「運動します」

    └ 医師:「いつ運動できそうですか?」

         「どんな運動なら続けられそうですか?」

         「週に何回くらいなら無理なく頑張れそうですか?」

     └ 患者:「週末、夕飯後に30分ほど歩きます」

  例②)

    └ 患者:「間食を減らします」

    └ 医師:「今は1日に何回、どんなものを間食に食べるんですか?」

         「量を減らします?回数?それとも内容を変えます?」

         「無理なく続けられる形を考えましょう」

     └ 患者:「夕食後の間食をやめます(昼食後の間食は継続)」

備考: 

提案を、患者が現実的に実行可能(無理なく)かつ超具体的な形に落とし込むのは、医師の腕の見せ所。提案が多すぎる場合には、まず1つに絞るのが大事。

糖尿病⑥:食事療法

食事療法のポイント

 ・1日3食、なるべく規則正しく。

 ・バランスのよい食事

   └ 主食(ご飯やパン・麺)

     主菜(肉や魚)

     副菜(野菜や海藻)  の3つを揃える。

 ・食物繊維(野菜・海藻・きのこ)を多く摂る。

 ・1食20分以上かける。 ゆっくりよく噛んで食べる。一口食べたら箸を置く。

 ・腹八分目。特に夕食はお腹いっぱいにしない。

 ・ソフトドリンクは厳禁!

 ・味は薄め、塩分は控えめに。

備考: 

「バランスのよい食事」を毎日・毎食続けられる人はいないため、「3食中2食、バランスよい食事ができるといいですね」という風に伝えてあげるとよい。

「よく噛んで食べる」というのは意外と難しいため、「一口食べたら箸を置く」という指導は有効。

間食のおすすめは、ヨーグルト、ナッツ、カカオ70%以上のチョコレート、茎わかめ、あたりめなど。


講義においては、常に「研修生側の目線」に立ちながらも、実践的かつ重要な知識や手技に的を絞って話をされていた堀井先生。

後半には、ご自身の研修時代や研修後について振り返りつつ、為になる体験談や赤裸々な苦労話、研修修了後にも繋がる助言などが現役生に贈られることとなりました。

The Registrar’s Lecture, one of our regular webinars, provides the opportunities to learn a variety of topics that could lead to any registrars’ improvements without sticking to its forms or contents.

For this session, we invited Dr. Minori Horii, who had successfully completed the RGPJ two years ago, as a lecturer and she talked about her specialty: internal secretion.

Thanks to her own experiences as an RGPJ registrar, the lecture focused at very practically important knowledge and tips for the current registrars, telling those from the perspective of them.

Moreover, she looked back on her training in the RGPJ and the current situation since its completion, at the end of the lecture.

Through the review, she frankly shared many profitable tips, tricks and traps with the registrars, based on her experiences.

It seemed that the messages from her included a kind of introduction about the future as a doctor after program completion and the warm yell stimulated the registrars’ motivation at last.

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