『ウェビナー報告日誌 2021「GP Road Map」編 vol.2 ― 予防医療と健康増進 ―』

 

オーストラリアのへき地で長年にわたり活躍されていたベテランGPのロナルド先生から、「総合診療の原則」について、様々な観点やテーマに沿って体系的に学ぶ『GP Road Map』。

 

折り返しの第5回目となる今回は、医師が担うべき最も大きな役割の一つとも言える「予防医療と健康増進」について、オーストラリアにおける最新の状況に関する情報などを交えつつ、基礎的な内容からベテランGPならではのコツや注意点まで、いつも通り丁寧に講義していただきました。

 

 

なお、今回の講義も、坂間先生による研修生の理解を深めるための的確なサポートのおかげもあり、終始ほがらかな雰囲気の中で進行されることとなりました。

 

そんな今回の講義から内容を一部を抜粋し、以下に紹介させていただきます。

 

 


 

 

 

予防の定義

 

▷ 「予防」とは

 

以下を通じて、健康を増進、維持し、疾病を避けるための手段である。

 

 

  ・リスクの除去 または 低減

 

  ・早期診断

 

  ・早期治療

 

  ・医原性を含む合併症の抑制

 

  ・障害に対する最大限の対応

 

 

 

 

健康増進の定義

 

▷「健康増進」とは

 

健康増進とは、健康な人々が健康的な行動を学び、自身の健康に責任を持てるように支援すること。

 

また、個人、地域社会が「健康であること」を「望ましい状態」とみなすようになるための動機づけと促しのことであり、健康的な生活実践により維持されるもの。

 

あるいは、人々が自身の健康をより管理・改善できるように支援するプロセスのこと。

 

 

 

 

機会を活用した健康増進

 

医師の行動:事後対応 vs 事前対応

 

事後対応をする医師の行動とは、目の前の問題点のみを取り扱うものである。

 

すなわち、

 

  ・よい働きを見せるだろうが、予防的ケアを実践する機会を失っている

 

  ・患者の健康にとって事前対応が必要である

 

  ・患者への対応に加えて、プロフェッショナルとしての行動が求められる

 

  ・医師主導の健康増進、予防的ケア、スクリーニングや疾患の早期発見を含む

 

 

備考

 

すべての受診が、予防の機会になる。患者が受診したのは、「予防のアドバイスをもらうため」ではないが、いつも「患者が生活の質を向上させられるよう伝えられる情報はないか」と考えなければならない。

 

また、健康増進に関する話題は、医師の側から切り出されるべき。

 

 

 

 

予防・健康増進のガイドライン『Red Book』

 

ガイドラインを活用することの重要性

 

しっかりと事前対応を行うことは重要ではあるものの、すべての患者に対して、あらゆる検査を実施できる訳ではないため、エビデンスに基づいたガイドラインを活用し、本当に必要な検査だけを実施することが重要。

 

 

 

▷ 『 Red Book 』

 

  ダウンロードはこちら

 

 

1989年以降、オーストラリアでは、Red Bookを活用している。

 

 

  ・GPの抱える患者への予防のすすめ

 

  ・リスクとニーズに基づいた患者へのアドバイス

 

  ・有益性が有害性を上回ることの証明されているスクリーニング検査を含む、最新のエビデンスに基づいた外来診療のためのガイドライン

 

 

 

 

予防のタイプ

 

一次予防

 

病気の発症を回避するための行動のこと。その結果として、病気は発症しない。

 

例)禁煙などの行動変容、マラリア予防のための蚊の根絶、予防接種、衛生管理、清潔な水野確保

 

 

二次予防

 

病気の進行を止めたり、遅らせたりするための行動のこと。

 

例)子宮頸部異形成の治療、マンモグラフィー、大腸ポリープに対する内視鏡検査

 

 

三次予防

 

障害を最小限にするため、確率された疾患を管理すること。

 

例)リハビリテーション

 

 

 

備考:予防タイプのフローチャート

 

 

 

 

心血管疾患リスクの予測ツール

 

CVD Calculator 

 

オーストラリアで活用されている「心血管疾患のリスク」を予測できるツール。

 

血圧や年齢、コレステロール値を入力するだけで、5年後にどのような病気を患う可能性があるかを知ることが可能。

 

 

利用は、こちらのリンクから。

 

 

 

 

『SNAPガイド』

 

SNAPガイド

 

 

S = Smoking(喫煙)

 

N = Nutrition(栄養)

 

A = Alcohol(アルコール)

 

P = Physical activity(身体活動)

 

 

健康上のリスクファクターをチェックする上で、非常に重要な上記4つの要素に関するガイドラインであり、オーストラリアでは好んで活用されている。

 

病歴を聴取する際には、「SNAP」を頭に浮かべ、喫煙や食事、アルコール摂取量や運動量について尋ねることで、患者の生活習慣が健康的であるかどうかを、容易に判別することが可能になる。

 

 

ダウンロードは、こちら

 

 

 

 

 


 

講義において、「予防ケアの鍵は事前対応にあり、常にプロアクティブになることが大事です」と語り、実際に「予防の実践」を通常の外来診療に組み込む方法と、その重要性を強調するロナルド先生。

 

さらに今回、ロナルド先生は、限られた時間やリソースの中で最大限に予防と健康増進を実践するために、様々な「ガイドライン」を積極的に活用することを強く推奨され、幾つもの有用なガイドラインの情報もご共有くださいました。

 

 

講義の合間合間に設けられた質疑応答の時間においても、坂間先生のサポートもあり、いつも以上に活発に意見の交換が行われることとなり、研修生にとっても、今回の講義は多くの実りある時間となったようでした。

 

 

 

 

 

 

 

The GP Road Map, a well-structured lecture course focusing on studying about the essence of General Practice by Dr. Ronald McCoy, has successfully delivered, this month too.

 

This time, Dr. Ronald McCoy, an Australian veteran GP who has currently been dedicated to the training of the next generations in Australia, talked about “preventive medicine and health promotion” and stressed its importance in the roles of healthcare.

 

 

“Being proactive is the key to preventive care”, said Dr. McCoy in the lecture. He emphasized how important practical preventive care methods to be incorporated into routine primary are consultations is.

 

At the same time, he strongly encouraged the registrars to utilize a variety of good guidelines in order to minimize expenses and maximize results in the routine examination. Then, he actually shared some splendid guidelines he recommends with registrars.

 

 

Also, Q&A sessions and discussions were warmed up this time too, thanks to Ms. Sakama’s devoted supports. It seemed that the registrars proactively asked questions to Dr. McCoy in English and enjoyed exchange of their opinions throughout the lecture.

 

 

 

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