『ウェビナー報告日誌 2023「GP Road Map」編 vol.6 ― 緩和ケア ―』

 

総合診療やへき地医療の“本場”とも言えるオーストラリアにて長年にわたり第一線に立たれてきたロナルド先生から、体系的かつ包括的に「総合診療の原則」について教えていただく『GP Road Map』。

 

今回のセッションは「緩和ケア」について。総合診療やへき地医療とも繋がりの深い「在宅医療」とも密接に絡む、現代社会において非常に重要な医療をテーマに講義が行われました。

 

 

 

 

以下に今回の講義から内容を一部抜粋してご紹介します。

 


緩和ケア:症状緩和

 

「症状緩和」の原則

 

 

  ・原因究明にかかる負荷と緩和すべき症状とのバランスを考慮する

 

  ・治療は可能な限りシンプルに

 

  ・的確な病状説明と治療を提供する

 

  ・定期的なレビュー(振り返り)を実施する

 

  ・頓服ではなく定時薬でのコントロールを

 

  ・痛みを克服できる「適量」の計画・模索を

 

  ・必要に応じて物理的な処置を実施する

    腹腔・胸腔穿刺、神経ブロック など

 

  ・補完的な保存療法を提供する

    マッサージ、理学療法、作業療法、

      食事のアドバイス、リラクゼーション療法 など

 

  ・できるだけ密接(緻密)な管理を心がける

 

 

 

備考:

 

前提として、「症状が出てから緩和する」よりも「症状が出ないように予防する」方がずっと簡単

 

何度も症状が繰り返されている場合には、必要な時だけ処方するのではなく「定期的に薬を服用する」ことを絶対的なルーティンとさせることが重要。

 

 

緩和ケア:症状緩和(コントロール)

 

症状緩和に関する一般的な症状

 

 

  ・退屈

 

  ・孤独感、孤立感

 

  ・恐れ 、不安

 

  ・身体的、感情的、精神的、社会的な問題

 

  ・食欲不振

 

  ・嘔気、嘔吐、便秘

 

  ・その他

 

 

 

備考:

 

  退屈感は、もっとも一般的な症状。退屈や孤独感を感じないよう、

   一日の予定を埋めるように患者に働きかけるとよい。

 

  症状のコントロールとは、「料理のレシピを見ながら治療をする」ようなもの。

   料理のレシピとは、すなわち各種ガイドライン。

 

 

 

緩和ケア:痛み ①

 

「疼痛緩和

 

  ・「痛み」は進行がんにおいて最も一般的で最も恐れられ、しかし最も対処可能

 

  ・「疼痛緩和」は緩和ケアにおける最も重要な課題のひとつ

 

  ・「痛みは取り除ける」ということを患者に知らせるべき

 

 

   ☆適切な薬を、適切な量と適切なタイミングで

     

    ⇒ 疼痛の80~90%は対処が可能

 

 

 

備考:

 

 ・対処可能な「80~90%の痛み」に対処することが、GPとしてすべきこと。

 

 ・適切な治療により症状が改善・緩和されれば、患者は医師を信頼し、

  恐怖心も同時に緩和させていく。  

 

 

緩和ケア:痛み ②

 

「疼痛緩和」の原則

 

  1.根本的な原因を治療する(例:がん)

 

  2.痛みの閾値を上げる(痛みに強くなってもらう)

    └ 適切な説明を与え、患者が感情や考えを吐き出せるようにしてあげる

      恐怖を取り除くために抗うつ薬や睡眠薬の処方も

 

  3.必要時には、痛みのレベルに応じて鎮痛剤を投与する

 

  4.特定の痛みには特定の薬を用いる

    └ 鎮痛薬があらゆる痛みに効果を発揮する訳ではない

 

  5.現実的なゴールを設定する

 

  6.疼痛緩和における「全体の方針」を立てる

 

 

備考:

 

 ・「痛みの閾値を上げる」とは、患者に痛みについて話してもらい、

  それがどのような痛みなのか、何が問題なのかを正確に把握して

  詳細な情報を得ること

 

 ・「現実的なゴール」とは、その治療が「症状・病状の根治を目指して行うもの」

  ではなく「緩和的な処置」であると、患者に理解してもらうこと。

 

 

 

緩和ケア:その他の症状

 

▷ 一般的な「その他の症状」

 

  ・食欲低下

 

  ・便秘

 

  ・喘鳴と唾液の増加

 

  ・呼吸困難

 

  ・終末期の苦悩、不安

 

  ・頭痛

 

  ・対まひ

 

  ・しゃっくり

 

  ・抑うつ

 

  ・せん妄

 

  ・高Ca血症

 

 

備考:

 

しっかりと患者の様子を見極め、原因を究明して治療する姿勢を貫くことが大事。医師が真剣に対応していると感じれば、患者の気分を落ち着かせられるとともに、孤独感も緩和させられる。

 

「ちょっと頭が痛い」と訴える患者に対して、「ただ機械的・盲目的にアセトアミノフェンを処方するだけ」といったような態度・対応は厳禁。

 

 


時に「命」や「幸福」といった、絶対的な『正解』のない“難題”を背負いながら、患者やその家族と真っ向から向き合うことの求められる「緩和ケア」。

 

医師としてその難しさと担う役割の重大さを知悉するロナルド先生だからこその、実務的なアドバイスと精神的な助言が研修生方に贈られることとなった今回のセッションでした。

 

 

 

 

The GP Road Map, which is a webinar for enhancing the registrars’ abilities in terms of general practice through the lectures by Dr. Ronald McCoy from both skills and knowledge, was conducted again the other day.

 

The theme of the session was “palliative care”, which is highly related to home care which has a close relationship with general practice or rural medicine, as is well known.

 

Dr. McCoy had accumulated a plenty of experiences in Australia fortunately, then he shared his wisdoms and tips for being a better doctor with the registrars through the session.

 

 

As a matter of fact, often doctors are pressed to face their patients and its families eye-to-eye in palliative care, with holding some “puzzles” that has no absolute answer such as life or welfare on their shoulder.

 

Dr. McCoy are also thoroughly versed in those difficulties and importance, however, so he inducted both practical tips and advices on moral to the registrars.

 

 

It must have been a good Christmas gift for them.

 

 

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