『ウェビナー報告日誌 2023「Registrar’s Lecture」編 vol.3 ― 消化器診療 ―』

 

総合診療医としてのさらなる知識と手技の強化を図るための、研修生の研修生による研修生のためのウェビナー『Registrar”s Lecture』。

 

今回の講義には、『Rural Generalist Program Japan(RGPJ)』第4期生であり、現在は羽田空港検疫所支所にて検疫医療専門職としてご活躍されている松原 祥平先生を講師にお招きし、消化器診療をテーマにお話いただきました。

 

 

 

 

以下、講義の内容から一部を抜粋してご紹介します。

 

 


 

胃薬の特徴と使い分け

 

▷ P-Cab(ボノプラザン / タケキャブ)

 

  ☆ 最強の新人 - 副作用は未知数

 

 

    ・1日1回

 

    ・即効性あり

      └ 内服4時間後に胃酸のph上昇

 

    ・CYP2C19に依存しない

 

    ・酸性下でも効果安定

 

 

 

 

▷ PPI

 

  ☆ まだまだエース - 実績豊富

 

 

    ・1日1回

 

    ・即効性低い

      └ 3~5日で血中濃度MAX

 

    ・(製剤により)CYP2C19に依存する

 

    ・酸に不安定

 

 

 

 

▷ H2b

 

  ☆ 往年の名選手 - 根強いファンあり

 

 

    ・1日2回

 

    ・即効性あり

  

    ・耐性あり(トレランス現象)

 

    ・急な中止後

      └ 1~5日のリバウンド

 

    ・CKDで調整が必要

 

 

 

 

 

松原先生流 胃薬の使い分け術

 

 

  タケキャブ ⇒ 症状がひどい、即効性がほしい

 

 

  PPI ⇒ 基本的にはコレ

 

 

  H2blocker ⇒ 1日2回飲みたい人

            └「1日2回 薬を飲む」という行為・事実で

              気持ちが落ち着く患者に対して 等

 

 

 

 

 

備考: 

 

 

・PPIの中でも、ラベプラゾールのみ「20mg/回×2回」に増やせる。

 逆流性食道炎の患者で「もっと胃酸を抑えたい」という場合には有効な処方。

 

 

・CYP2C19メインPPI+クロピドグレル ⇒ 効果減弱 のため要注意

 

 

「これから胃酸が出るぞ」というタイミングで血中濃度が上がっていた方がよいため、

 PPIの処方で、かつ「もっと胃酸を抑えたい」という場合には

 原則として「食前内服」がおすすめ。

 

 

 

便秘に対する処方

 

▷ 便秘

 

  └ 便の硬さ

 

  └ 腸管蠕動

 

 

   ※上記2つの軸に分けて考えると、薬の処方がしやすくなる

 

 

 

 

▷ 刺激性下剤

 

  ・センノシド

    └ 連用により耐性のリスク頓服で。

 

 

  ・ピコスルファート

    └ 液剤。頓服で。

 

 

  ・テレミンソフト

    └ 座薬。頓服で。

 

 

  ・新レシカルポン坐剤

    └ 座薬。頓服で。

 

 

 

 

▷ 浸透圧性下剤

 

  ・酸化マグネシウム(塩類下剤)

    └ CKDでは高Mg血症に注意。

 

 

  ・ラクツロース(糖類下剤)

    └ シロップ。主に高アンモニア血症に対して。

 

 

  ・モビコール(高分子化合物)

    └ 溶かす水分量に決まりあり。飲み方が少し煩雑

 

 

 

 

▷ 膨張性下剤

 

  ・ポリカルボフィルカルシウム

    └ 適応:過敏性腸症候群。下剤にも便秘にも。腹満に注意。

 

 

 

 

その他

 

  ・アミティーザ

    └ 腸管内水分up。嘔気多いため少量から(特に若い女性)。

 

 

  ・グーフィス 

    └ 胆汁酸吸収抑制。腸管内水分up+腸管蠕動up

 

 

  ・リンゼス

    └ 腸管内水分up。腸管知覚過敏に効果あり。食前投与。

 

 

  ・スインブロイク

    └ オピオイド誘発性便秘症。

 

 

 

 

▷ 漢方

 

  ・大建中湯 / 麻子仁丸 / 桂枝加芍薬大黄湯 / 防風通聖散 / 大黄甘草湯

    └ 大黄が入っているものは、連用で耐性のリスク

 

 

 

 

 

松原先生流 便秘への対処法

 

 

  ☆ 基本

 

    ① 酸化マグネシウム

 

    ② リンゼス

 

    ③ アミティーザ

 

    ④ リンゼス

 

    ⑤ モビコール

 

     ※ 数字の順に優先度高

 

 

 

 

 ☆ 中期的

 

    漢方

 

 

 

 

 ☆ 頓服

 

    ・ラキソベロン

 

    ・センノシド

 

    ・新レシカルボン坐剤

 

    ・テレミンソフト    

 

 

 

 

 

備考: 

 

・便秘の中に過敏性腸症候群が混じっている場合も結構あるため、

 腸管知覚過敏にも効果があるリンゼスはおすすめ。お腹が張っている、と感じやすい人にも〇。

 

・グーフィスは、腸管の蠕動を上げるほか、耐性リスクもないため、使いやすい薬だと言える。

 

 

 


 

 

自身もかつて同じ研修生だったこともあり、実体験に基づくコツやアドバイスを適宜添えながら、「総合診療医を志す研修生に必要な知識や手技」に的を絞って講義された松原先生。

 

研修生時代から情報整理術に長けていた松原先生らしい豊富なスライド資料の助けもあり、しっかりと“先輩”から”後輩”への知識のバトンタッチが行われていたようでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

The other day, we thankfully held again the one of our monthly regular webinar of the registrars, for the registrars, by the registrars: the Registrar’s Lecture.

 

 

 

For the session, we invited Dr. Shohei Matsubara, who had completed the RGPJ several years ago and have been working at the quarantine station in Haneda Airport. 

 

As a matter of fact, not only he has specialized in gastroenterological medicine but also he had learned about tropical medicine on a full scale at Nagasaki University, the only laboratory which doctors could learn about it. 

 

 

 

Anyway, he also was the RGPJ registrar as mentioned above; it means he also has the perspective as a registrar who seek to be a GP. 

 

For that matter, he has been good at organizing information and forming the data. So, the visual aid he specially prepared for the session was in fact a big help for the registrars.

 

 

Fortunately enough, we were able to witnessed a passing of the baton from a senior to the juniors throughout the session. 

 

 

 

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA