『ウェビナー報告日誌 2021「Rural Skills」編 vol.2 ― 小児科 ―』

 

毎回様々な分野から講師の先生をお招きして、へき地や離島で働く総合診療医として「知っておきたい知識」や「身に付けておくと便利な手技」などに焦点を当てて講義をしていただくウェビナー『Rural Skills』。

 

今回は、数ある診療科目の中でも特殊な立ち位置にあると言える「小児科」がテーマに、町田市民病院小児科から王謙之先生、山梨厚生病院小児科から岡藤麻未先生をお招きして、お二人それぞれの観点やテーマから「小児科」について伝授していただきました。

 

 

 

 

以下に、通常は60分のところを“90分拡大版”となった今回の講義の内容について、一部抜粋してご紹介いたします。

 

 


 

 

「かぜ」の診察

 

▷ チェックポイント

 

 ・全身状態は?

 ・SpO2、多呼吸じゃないか?

 ・努力呼吸の有無、喘鳴の有無、吸気 or 呼気?

 

 

▷ 問診のポイント

 

 ・いつ、どんな時、どんな咳が出る?

 ・鼻水をすすっていない?

 ・喘息っぽいと言われてことはない?

 ・眠れているか?食べられている?

 ・咳き込んで履いたりしていない?

 

 

備考:

 

「夜中に寝る時になると咳が出るんです」という風に言われることが良くあるが、横になったことで鼻水が後ろに回ってしまったことで咳が出ているケースが多い。問診を適切に行うことで、「その咳が、どこ(何)由来の咳なのか」を判別しやすくなる。

 

 

 

こどもや赤ちゃんのSpO2の測り方

 

  ・小児用のSpO2測定プローブを、しっかりと指先に巻き付ける。

 

  ・こどもが動いてしまってうまく測れない時は、「足の親指」でも可。

   (HRが安定するまで、しっかり持っておくのがコツ)

 

  ・新生児や小さい子の場合は、足の甲を挟むようにしても測定できる。

 

 

備考:

 

SpO2が低い時は、「きちんと測定できていない」ことが原因のケースも多い。「顔色と測定結果が何だか一致しないな」と感じた場合、もう一度、測定し直すと良い。

 

 

 

小児への処方

 

・厳密には、「体表面積」で計算するが、日常的な薬は「体重」で計算する。

 

・10kg、15kg、20kgなどの単位に区切り、「よく使う薬」の処方量をまとめた表を作ったり、セットしておいたりすると便利。

 

「成分量(力価)」と「製剤量」との違いに要注意!(病院によって異なる)

 

 

e.g.) 『カルボシステインドライシロップ50%』

   ⇒「成分量」で「30mg/kg/day 分3 」

 

10kgのこどもに処方したい時

   ⇒成分量:300mg/day 分3

    製剤量:0.6g(600mg)/ day

 

備考:

処方の指示を出す際に、「成分量」と「製剤量」とを間違えることのないよう、自分の働く病院が「成分量」と「製剤量」のどちらを基準に採用しているか、参考にしたガイドラインや本がどちらの基準で書かれているかを、しっかり確認しておくと良い。

 

「こどもが薬を飲んでくれません」という場合には、(アレルギーの有無に注意した上で)「練乳」や「チョコアイス(特にハーゲンダッツ)」と一緒に飲ませる方法を指導するのがオススメ。

 

 

 

日常的に使う「気道感染」への処方の一例

 

▷ 去痰薬(鼻水サラサラの薬)

  ・カルボシステインドライシロップ 30mg/kg/day 分3(シロップ 0.5ml/kg/day)

  ・アンブロキソールドライシロップ 0.9mg/kg/day 分3(シロップ 0.3ml/kg/day)

 

 

▷ 喉の痛み

  ・トラネキサム酸 25mg/kg/day 分3(目安:1歳 300mg / 3歳 400mg / 12歳 750mg)

 

 

▷ 咳止め(最近はあまり処方しない)

  ・アスベリン 2mg/kg/day 分3

 

 

▷ β刺激薬の貼付剤(喘鳴がある時に有効)

  ・ホクナリンテープ 0.5~3歳 0.5mg / 3~9歳 1mg / 9歳~ 2mg

 

 

▷ 解熱剤(生後6ヶ月以上から)

  ・アセトアミノフェン 10mg/kg/dose 6時間以上あけて、1日3回まで

   (アンヒバ座薬、アルピニー座薬)

 

 

▷ クループの時

  ・デキサメタゾン 0.15mg/kg/dose 単回処方

  (デカドロンエリキシル(0.1mg/ml) 1.5ml/kg(「デカドロン錠」の粉砕でも可)

 

 

備考

 

① β刺激薬の貼付剤

「ホクナリンテープ」はかぶれることがある。こどもが剥がして食べてしまうこともあるので、なるべく背中に貼ってもらうよう指導する。また、過剰となってしまうため、「メプチンドライシロップ」と併用しないよう注意。

 

② 解熱剤

解熱剤を処方する時は、「熱が高くて眠れない時や食べられない時、しんどい時に使ってくださいね」とアナウンスしてあげると良い。

 

③ クループの時

診察室でも犬吠様咳嗽がある時は使った方が良い。ボスミン吸入の効果は一時的。デカドロン錠の粉砕を使う時は単シロップも処方するか、チョコアイスと一緒に摂取させるのがおすすめ。

 

 

 

抗ヒスタミン薬とけいれん

 

・鎮静性抗ヒスタミン薬は、「痙攣の閾値」を下げる作用がある。

 

・熱性けいれんの既往のある小児に対しては、発熱中の鎮静性抗ヒスタミン薬(ポララミンなど)の使用は、熱性けいれんの持続時間を長くする可能性があるため、推奨されない。

 

中枢移行性の低い「第2世代後期の非鎮静性抗ヒスタミン薬(ザイザルなど)を処方する。

 

 

 

抗ヒスタミン薬の処方

 

▷ 体重で計算しなくてOKなオススメの一例

 

ザイザルシロップ(レボセチリジン)

 6ヶ月~1歳 未満 2.5ml/day 分1

 1歳~6歳 5ml / day 分2

 

アレロック細粒(オロパタジン塩酸塩)

 2歳~6歳 5mg/day 分2

 7歳~ 10mg/day 分2

 

アレグラ(フェキソフェナジン)

 7歳~12歳 30mg 2錠 分2

 12歳~ 60mg 2錠 分2

 

 

▷ アレルギー性鼻炎の時に

 アラミスト点鼻薬 両鼻腔 1日1回 1噴射

 

 

備考:

 

アラミスト点鼻薬はこどもも大人、どちらにも使える。「数日使っただけでは効きませんが、1週間ほど継続して使用すると効いてきます」と、しっかりアナウンスしてあげる。

 

「セレスタミン」は、ステロイドを含んでいるため、小児に対しては安易に使わないよう要注意。

 

 

 

鼻水への対処

 

 ・鼻かみ(特に寝る前と食事(哺乳)前)の指導

 

 ・鼻汁吸引

 

 ・加湿

 

 

備考:

 

鼻汁吸引に関しては、Amazonで手頃な価格で「電動鼻吸い機」が購入可能なため、それを教えてあげると良い。

 

鼻水に関しては、完全には止まらないこともある。睡眠や哺乳・食事に問題がなく、元気な様子であればある程度は許容する。日柄でよくなることもある。

 

 

 

 

抗生剤の処方

 

・大部分の上気道炎はウイルス性のため、抗菌薬は不要。

 

・経過中に発熱が持続し咳嗽が悪化する、膿性鼻汁を認めるなどの気管支炎や副鼻腔炎などの二次感染を疑う場合には、処方する。

 

 

▷ 呼吸器感染に対する内服抗菌薬における1st choice

 アモキシシリン 30mg/kg/day 分3

 

 

備考:

 

8歳以下に「ミノマイシン」は処方しないよう注意。

 

 

 

 


 

今回の講義では、「診断の特に難しい乳幼児(とその親御さん)に対して、どのような点に注意しながら診察を行えばよいか」というテーマの下、王先生からは症例検討なども交えつつ、「小児科専門医ではない医師として押さえておきたいポイント」についてわかりやすく指導していただきました。

 

また、岡藤先生からは、「かぜ」や「便秘」、「アレルギー」など、乳幼児や小児によく診られる症状や疾患をテーマに、「知っておくと便利なコツや知識」について豊富かつ有用な情報が研修生たちに惜しげなく共有されることとなりました。

 

 

今回の講義は「小児科」という専門性と特殊性の強い診療科目がテーマだったこともあり、研修生の先生方も終始興味深そうに耳を傾けていたほか、手元でメモを取ったりする様子もしばしば。質疑応答の時間にも質問が相次ぎ、研修生たちにとっても新しい学びの多い時間となったようでした。

 

 

 

 

 

 

 

We had a “Rural Skills”, a regular monthly webinar that focuses on letting the registrars absorb a wide variety of knowledge and tips often required in rural and remote settings, this month, too.

 

The main topic of the sessions were “pediatrics”.  Although the “Rural Skills” is usually 60-minute session, this time we invited two pediatricians: Dr. Qianzhi Wang and Dr. Asami Okafuji as lecturers and their lecture was conducted as 90-minute session.

 

 

 

For your information, the gist of the lecture was as follows:

 

 

 ・Case Study (How to examine babies and infants)

 ・tips on common cold

 ・tips on astriction

 ・tips on allergia

 ・tips on anaphylaxis

 ・tips on hives

 ・tips on ketotic hypoglycemia

 

 

Actually, the pediatrics is one of the highly specialized realm that requires expertness  among any other clinical departments, so it seemed that the contents of the lectures were full of tips and wisdoms for every registrars.

 

As always, everyone listened attentively to both lecturers and asked acquisitively them in order to improve them as a GP, at the end of the session. They must have a good time this time again, definitely.

 

 

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