『ウェビナー報告日誌 2024 vol.5 ― 「プライマリケア医の麻酔」 ―』

 

 

離島やへき地でも通用する総合医療について、様々な診療科のベテラン医師による指導を通じて実践的な知識と手技の体得を図るための、『Rural Generalist Program Japan(RGPJ)』の研修ウェビナー。

 

今回の講義では、『RGPJ』において指導医を務める山口 卓哉先生が講師となり、山口先生の専門領域である「麻酔科」について学びが深められることとなりました。

 

 

 

 

 

 

 

以下、今回の講義から内容を一部抜粋してご紹介します。

 

 


 

 

「キシロカイン」について ①

 

 

 1%キシロカインの「持続時間」

 

 

 

 ・発現時間(Onset) ー 2~5

 

   └ 注射したら「5分」は待って、

 

 

 

 

 ・持続時間(「麻酔」として) ー 30~60

 

   └ 手術は「60分」以内に終わらせ、

 

 

 

 

 ・持続時間(「鎮痛」として) ー 90~120

 

   └ 術後に『麻酔が切れた』と言われるまで「2時間」ほど

 

 

 

 

 

備考:

 

 

実際の臨床や診察においては、「施術側としての持続時間(麻酔)」と「患者としての持続時間(鎮痛)」とはあらかじめ分けて考え、それぞれの持続時間を把握しておくことが重要。

 

なお、「2%」キシロカインを用いた場合、発現時間にそれほどの差は見られない一方で、持続時間は「1%」使用時比で最大1.5倍ほど長くなるため、一見すると「2%」の方が有用と思われるものの、後述の理由により「総合診療医にはあまりお勧めしない」

 

 

 

「キシロカイン」について ②

 

 

キシロカインの「許容量」

 

 

 極量 = 5mg / kg

 

 

 

 

 許容量(体重50kgの場合)

 

 

   2% ー 12.5cc(日本の添付文書では「10cc」

 

   1% ー 12.5cc(日本の添付文書では「20cc」

 

   0.5% ー 12.5cc(日本の添付文書では「50cc」

 

 

 

 

 

備考:

 

上記の場合、日本で医療をする限り1回の処置に際して使用できるキシロカインの本数は、1%の場合は「2本」までであるのに対し2%の場合は「1本」まで

 

処置に不慣れな場合、どうしても多く使いがちになってしまうため、許容本数の多くなる「1%」の方が推奨される(=上述の「総合診療医にはあまりお勧めしない」理由)

 

 

 

「キシロカイン」について ③

 

 

「極量」とは

 

 

極量とは「その量までは使っても大丈夫な安全値」ではなく、「これ以上の使用は局所麻酔薬中毒を誘発する危険性が高く、それ以上を使用してはならない上限量」と考えるべきもの。

 

 

 

 

 

備考:

 

極量はあくまで「上限値」であるため、基本的に麻酔はなるべく少ない投与量で済ませる意識が大事。

 

例えば、「15ccの投与量で済んだけど極量20ccだし、ちょっと足しておくか」といったような考え方は慎まれるべき。

 

 

 

 


 

 

『RGPJ』発足以来、総合診療医を志す数多くの研修生を指導してきた一方で、かつて「麻酔科の知識を実際の臨床に活かすことは難しい」という卒業生からの率直なフィードバックを受け、指導や講義の内容についても葛藤してきたと語られた山口先生。

 

 

綿々と続いてきた卒業生たちからの“バトンパス”と先生の試行錯誤の成果が、何気ない指導や資料の随所に汲み取れるような、そんな講義の時間となったようでした。

 

 

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA