『ウェビナー報告日誌 2023「Rural Skills」編 vol.2 ― 小児科 ―』

 

様々な診療科の経験豊富な専門医から「総合診療医として押さえておきたい手技や知識」を伝授していただくためのウェビナー『Rural Skills』。

 

今回は、山梨厚生病院より岡藤 麻未先生を講師にお招きし、「小児科」をテーマに講義をしていただきました。

 

 

 

 

以下に、今回の講義から内容を一部抜粋してご紹介します。

 

 


 

 

「風邪」のとき

 

 

 「診察」のポイント

 

 

 ・全身状態は?

 

 ・SpO2、多呼吸じゃないか?

 

 ・努力呼吸の有無、喘鳴の有無、吸気or呼気?

 

 

 

 

 「問診」のポイント

 

 

 ・いつ、どんな時、どんな咳がでる?

 

 ・鼻水はすすっていない?

 

 ・「喘息っぽい」と言われたことはないか?

 

 ・眠れている?食べられている?

 

 ・咳き込んで吐いたりしてはいない?

 

 

 

 

備考:

 

 

・「喘息って言われたことありませんか?」と尋ねても「ない」と答えられてしまう場面でも、「喘息っぽいって言われたことありませんか?」と尋ねると「あります!」という反応が返ってくる場合がよくあるため、「喘息っぽい」という表現を使うのはおススメ。

 

 

・「横になってから咳が出る(寝ると咳が出る)」という場合には、「鼻水が後ろに回って喉に絡んで咳が出ている」場合が多いので要注意。「胸が悪い」と思って来診する人が多いので、「原因は胸じゃなくて鼻ですよ」と指摘してあげることも重要。

 

 

 

「鼻水」について

 

 

鼻水が出る「メカニズム」

 

 

 

 ① アセチルコリンによる

  ⇒ 風邪の時の鼻水

 

 

 ② ヒスタミンによる

  ⇒ アレルギーの時の鼻水

 

 

 

 

備考:

 

 

「大前提として、風邪による鼻水を薬で止めることはできない」という事実を、きちんと保護者に理解してもらう努力をすることが大事。「鼻水が全然とまらない=薬が効いてない」という誤解から信頼関係が崩れ始めることもしばしば。

 

 

・第一世代抗ヒスタミン薬(ペリアクチン等)は、アセチルコリンとヒスタミンどちらもブロックするため「効く気がする」ものの、実際には抗コリンの作用で鼻がカピカピになって逆に詰まってしまうため要注意。さらには痙攣を誘発する危険性もあるため、第一世代は使用すべきではない。

 

 

 

「抗ヒスタミン薬」と「痙攣」

 

 

鎮静性抗ヒスタミン薬について

 

 

 

 ・鎮静性抗ヒスタミン薬は「痙攣の閾値を下げる」作用がある

 

 

 ・熱性痙攣の既往のある小児において、

  発熱中の鎮静性抗ヒスタミン薬(ポララミン等)の使用は

 「熱性痙攣の持続時間を長くする可能性がある」ため推奨されない

 

 

 ・中枢以降性の低い第二世代後期の非鎮静性抗ヒスタミン薬(ザイザル等)

  の処方が推奨される

 

 

 

 

 

▷ 抗ヒスタミン薬の処方

 

 

体重で計算しなくてOKなオススメの一例

 

 

 ザイザルシロップ(レボセチリジン)

 

 6ヶ月~1歳 未満 2.5ml/day 分1

 1歳~6歳 5ml / day 分2

 

 

 

 アレロック細粒(オロパタジン塩酸塩)

  

 2歳~6歳 5mg/day 分2

 7歳~ 10mg/day 分2

 

 

 アレグラ(フェキソフェナジン)

 

 7歳~12歳 30mg 2錠 分2

 12歳~ 60mg 2錠 分2

 

 

 

▷ アレルギー性鼻炎の時に

 

 アラミスト点鼻薬 両鼻腔 1日1回 1噴射

 

 

 

 

備考:

 

 

アラミスト点鼻薬はこどもも大人、どちらにも使える。「数日使っただけでは効きませんが、1週間ほど継続して使用すると効いてきます」と、しっかりアナウンスしてあげる。

 

「セレスタミン」は、ステロイドを含んでいるため、小児に対しては安易に使わないよう要注意。

 

 

 

「薬を飲ませる」ためのコツ

 

 

「薬が飲めないんです……」

 

 

 ・ドライシロップは、水に溶かすとシロップになる散財

 

 

 ・甘いコーティングがしてあるので

   └ 去痰薬と抗生剤を混ぜて溶かす

   └ オレンジジュースに溶かす

   └ 水に溶かしたまま放置    

 

  ⇒ ドライシロップのコーティングが剥げて激マズに!

 

 

 

おすすめの方法

 

 

・練乳やハーゲンダッツの「チョコ味」で薬を包むようにしてあげる

 

・駄菓子の「ねるねるねるね」は、薬の味を誤魔化せるのでおすすめ。

 

 

 

 

備考:

 

 

・最近発売された専用の『おくすりパクっとねるねる』もおすすめだが、購入できる場所が限られているのが難点。

 

内服後15分以内に吐き戻してしまった場合には、飲み直し。

 

 

 

「便秘の対処と処方」について

 

 

直腸に溜まった硬い便を出す

 

 ・グリセリン浣腸  1~2ml/kg/dose

 

 

 

 

② その後の便性を改善させるための内服を開始

 

 

 乳児~2歳以下

 

 

  ラクツロース(モニラックシロップ) 0.5~2ml/kg/day  分3

 

  酸化マグネシウム  0.02~0.1g/kg/day  分3 

 

 

 

 

 2歳以上

 

 

  モビコール 初回1包/day  最大4包/day  分2

    └ ※7歳以上12歳未満の場合 ⇒ 初回2包/day

 

 

 

 

 それでも出ない時……

 

  ピコスルファートナトリウム(ラキソベロン)

 

 

  目安:

 

     6ヶ月以下 ⇒ 2滴

 

     7~12ヶ月 ⇒ 3滴

 

     1~3歳 ⇒ 6滴

 

     4~6歳 ⇒ 7滴

 

     7~15歳 ⇒ 10滴   から調節

 

 

 

 

 

備考:

 

 

・新生児の場合、まず綿棒浣腸を試してみて、ハーフのグリセリン浣腸をしてみる

 

 

・モビコールは、海外では慢性便秘の標準治療薬

 

  └ 水に溶かす量を患者側で調節してもらったり、

   1日の中で何回かに分けて飲んでもOK

 

  └ 少し塩味があるため、リンゴジュースやカルピス、

   ソルティライチなどと飲むのがおすすめ

 

  └ 十分な量の水分とともに内服することが重要

 

 

 

 


 

 

慣れ親しんでいたはずの「薬の処方」や「診察」一つとっても「大人」とは異なる判断や対処が求められる上に、同時に「保護者」側への配慮も求められるという難しさをも内包する「小児科」。

 

そんな“難所”を幾度も乗り越えられてきた岡藤先生ならではの実践的な助言や指摘には学ぶべき所が多かったようで、積極的に教えを物にしようとする研修生の先生方の姿がとても印象的でした。

 

 

 

 

Again this month, we held our regular monthly webinar aiming at enhancing the registrars’ skills and knowledge through the lectures by veteran specialty doctors: the Rural Skills.

 

For this session, we invited Dr. Mami Okafuji from Yamanashi Kosei Hospital and she gave a special lecture on pediatrics.

 

 

As a matter of fact, doctors in pediatrics are always required to judge and act under not only different but also proper criteria compared to seeing adult patients.

 

In addition to that, often they also have to make appropriate consideration toward the patients’ parents at the same time.

 

Combining those delicate aspects is one of big difficulties in pediatrics, with no doubt.

 

 

In this context, Dr. Okafuji had countlessly overcome those difficulties and her practical advices based on such long experiences must have been so beneficial for the registrars in order to be a better doctor.

 

 

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