『ウェビナー報告日誌 2023「Rural Skills」編 vol.1 ― 眼科 ―』

 

毎回異なる診療科に的を絞り、「総合診療医として押さえておきたい手技や知識」の体得を目指して様々な専門医の先生方から講義をしていただく『Rural Skills』。

 

今回は東京のやくも診療所より、ウェビナーではもちろんワークショップでも”お馴染み”の石井 恵美先生を講師にお招きし、「眼科」をテーマにお話ししていただきました。

 

 

 

 

以下、今回の講義内容から一部を抜粋してご紹介します。

 


「眼痛」の鑑別

 

 

眼痛から何を鑑別すべきか

 

 

 角膜 ⇒ 角膜障害(点状表層角膜炎、角膜潰瘍、ヘルペス)、ドライアイ、角膜異物

 

 結膜 ⇒ 結膜異物、麦粒腫、霰粒腫

 

 強膜 ⇒ 強膜炎

 

 眼圧 ⇒ 緑内障

 

 頭蓋内圧亢進 ⇒ くも膜下出血

 

 頭痛 ⇒ 片頭痛

 

 

 

 

備考:

 

 

・角膜潰瘍は「コンタクト使用者」に多く見られ、中でも「コンタクトの使い方が悪い

 若年層」には頻出のため、 若年層の診察においては「コンタクト使用の有無」を

 まず念頭に置くとよい

 

 

・痛みの原因がはっきりとしない場合、「充血に加え、眼球運動痛がある」ようであれば

 「強膜炎」が疑われる

 

 

 

「目ヤニ」の鑑別

 

 

「目ヤニ」が出はじめた場合

 

 

 ・細菌性結膜炎 ⇒ 原因:黄色ブドウ球菌

 

 ・ウイルス性 ⇒ 原因:緑膿菌

 

 ・糸状菌感染 ⇒ 原因:ウイルス性

 

 ・カンジタ、術後、IVH長期留置 ⇒ 原因:真菌(糸状菌、カンジタ)

 

 ・アカントアメーバ、コンタクトレンズ長時間使用 ⇒ アカントアメーバ

 

 

 

 

☆目ヤニが「黄色っぽい」か「白っぽい」かは、鑑別する上での一つの大きなポイント

 

 

 例)

 

  「黄色い」目ヤニがべったり:「細菌性」の可能性が高い

                 

                 抗菌薬でアプローチするのが一般的

 

  

  一般的に「ウイルス性」の場合は、目ヤニが少なくて「白っぽい」

 

 

 

 

 

備考:

 

・黄色ブドウ球菌・緑膿菌は、一般的な細菌感染よりも目ヤニが少なめ

 

・ウイルス性の場合、細菌性よりも目ヤニは少なめ

 

・糸状菌は植物表面や土壌の異物から感染し、一般的な抗菌薬に反応しない

 

・緑膿菌などは通常の抗菌薬だと少し反応が薄い

 

 

 

「見えない」の鑑別

 

 

▷ その「見えない」は、急に? 徐々に?

 

 

 ・急であれば:光覚有無、瞳孔反応の確認は重要! 

 

 ・患者の話・状況から「どこに影響が生じそうか」を想像・想定することが大事

 

 ・角膜、虹彩炎、前房出血、水晶体、硝子体、網膜で考える

 

 ・骨折の好発部位と眼球運動障害の有無を確認する

 

 ・血管系 ⇒ 「急激な視力低下」の場合に原因である可能性が高い

 

 ・網膜硝子体 ⇒ 網膜剥離は必ずしも緊急性が高い訳ではない

 

 

 

 

備考:

 

 

・眉毛の外側の骨折があれば「視神経管の骨折」が疑われるほか、

 血管はっきりとパンダ目のようになっていれば「眼窩底骨折」を疑う

 

 

・網膜剥離は「絶対に今日見つけて今日眼科に送らなければならない」というものではないため、

 最も緊急性が高いのは「動脈」と言える

 

 

・慢性的で徐々に見えなくなる場合、白内障や緑内障、網膜の変化などが考えられる

 

 

 

番外編:「熱中症・夏バテ」に効果的な漢方
 

 

「熱中症・夏バテ」におすすめの漢方(の処方)

 

 

1.夏バテの初期症状には、まず「五苓散」(ツムラ:17番)

 

  ⇒ 量依存のため、多めの分量を処方してしっかりと服用してもらう

 

 

 

2.まだすっきりせず「やけに冷たい物が欲しくなる」という場合には、

  「白虎加人参湯」(ツムラ:34番)

 

  ⇒ 完全に切り替えるか、「五苓散」にプラスして処方する

 

 

 

3.それでも「食欲が落ちた」「元気がどうにも出ない」となれば、

  「清暑益気湯」(ツムラ:136番)

 

 

 


眼科の専門医としての顔に加え、経験豊富な「漢方医」としての顔も併せ持ち、「西洋医学」と「東洋医学」それぞれの強みや弱みを熟知されている石井先生。

 

昨年までのウェビナーでもそうだったように今回も、その知見に基づく実践的かつ相補的な漢方の「使い方」や「考え方」には、研修生方の興味や関心もとりわけ大いに刺激されていたようでした。

 

 

 

 

 

 

 

The Rural Skills, a series of webinars aiming at learning about essential skills and knowledges for GPs from well-experienced doctors in their various specialties, was successfully conducted again, the other day. 

 

For this session, we invited Dr. Emi Ishii from Yakumo clinic as a lecturer and she lectured about ophthalmology, one of her specialty especially in Western medicine.   

 

 

 

On the other hand, as is already well-known in the “RGPJ” followers, Dr. Ishii is also well-experienced in Chinese medicine; it is her another specialty in Eastern medicine.

 

Knowing so well about both pros and cons of the Eastern and the Western respectively, she often stresses the importance of their proper usage and approach that complements each other, in order to maximize the medical outputs for the patients.

 

 

As is really often the case with her lecture, the registrars, who are the followers of Western medicine, seemed to be also interested strongly in her Eastern approach and sought to absorb her wisdom aggressively, in this session too.

 

 

 

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