『ウェビナー報告日誌 2022「Special Lecture」編 vol.1 ― 親父のウェビナー(整形外科)―』

 

毎週の定例ウェビナーに加えた『特別ウェビナー』。今回は益田市のあすかクリニックから、『親父の背中プログラム』でもお世話になっている井上 貴雄先生を講師にお招きしました。

 

今回の講義では、地域医療にも深く携わられてきた井上先生から、へき地における整形外科医の実情や実際に役立つ手技・知識について教えていただきました。

 

 

 

以下に、今回の講義の一部を抜粋してご紹介いたします。

 


 

 

老人性骨折の特徴

 

老人の骨折の特殊性

 

 ・骨は加齢とともに脆弱化し、軽微な外力により骨折を生じる

 

 ・脊椎椎体骨折では加齢による骨密度の減少と骨折発生率の間
  
には相関関係が見られる

 

 ・四肢骨折では、転倒という外傷の関与がなければ骨折は起こらない
  (例外あり)

 

 

老人の骨折の好発部位

 

 ・脊椎椎体骨折:重いものを抱えたり、尻もちをつくと発生する

 

 ・上腕骨近位部:転倒して手を突いて発生する

 

 ・橈骨遠位端部:転倒しててを突いて発生する

 

 ・大腿骨頸部または転子部:老年者では特徴的に
              大腿骨頸部転子部骨折が生じる

 

 ・店頭による直達外力が作用して発生する

 

 ・はっきりとした外相がなく骨折する不顕性の骨折もある

 

 

備考:

 

・成人以降、年齢による「骨のくっつく速度」に差はほぼない。ただし小児と老人を比較すれば、確実に小児の方が早い。

 

・「手術すべきはする or 保存的に様子見をする」など、かなりメリハリをはっきりつけないと、満足した治療にならない可能性が高い。

 

 

 

橈骨遠位部骨折

 

「保存的治療」を選択する場合

 

 ① 骨折部の転位が少なく安定している場合

 ② 何らかの理由で手術ができない場合

 

 

「手術」を選択する場合

 

 ① 転位が大きい場合

 ② 骨折部が不安定な場合

 

 

備考:

 

手術をした方が、「機能的」には圧倒的に早く回復する。手関節の拘縮や手指の動きへの悪影響を減らせるため、「手術をする」判断を下した場合には、早めに実施した方がよい。

 

 

 

 

上腕骨近位部骨折

 

「保存的治療」を選択する場合

 

 ① 骨折部の転位が少なく、比較的早期に訓練が可能

 ② 全身状態が悪い

 

 

「手術」を選択する場合

 

 ① 転位が大きい場合

 ② 早期訓練が必要な場合

 

 

「観血的治療法」の選択

 

 ① プレートによる整復固定

 ② 髄内釘式固定

 ③ 人工骨頭置換

  

  などの方法がある

 

備考:

 

・肩の関節は「拘縮が起こりやすい」ため、かなり注意が必要

 

 

 

小児骨折の特徴

 

 ・骨折部の骨癒合が早い

 

 ・自家矯正力がある

 

 ・成長軟骨が存在するため、成長障害が生じることがある

 

 ・不完全骨折が多い

 

 ・手術の絶対的適応が少ない

 

 

備考:

 

・「短縮」や「回旋」の生じている場合には、自家矯正力は働かない点に注意

 

・成長軟骨の損傷により、骨が短くなったり長くなったり、変形したりすることが多々あるため、注意が必要

 

 

 

小児骨折の合併症

 

骨折のずれや腫脹が強い場合は要注意

 

 ・神経損傷(上腕骨顆上骨折における「正中神経麻痺」など)

 

 ・血管損傷(上腕骨顆上骨折における「上腕動脈損傷」など)

 

 ・ギプス障害(過度の圧迫や締め付けが原因となる)

 

 ・フォルクマン拘縮(前腕屈筋筋区画症候群)

 

 ・変形治癒(外反肘、内反肘など)

 

 ・仮骨性筋炎に関節可動域制限(肘関節周囲の骨折に好発)

 

 

備考:

 

・フォルクマン拘縮は、起こしたら即裁判沙汰になるため、特に要注意

 

 

 

変形性膝関節症のヒアルロン酸関節内注射について

 

開始と終了のタイミング

 

 ・重度の変形性膝関節症に対しては効果が薄いため、軽~中等症で開始

 

 ・効果を患者が実感している間は継続する

 

 

手技について(刺入点、消毒法、入浴までの時間)

 

 ・刺入点については、膝蓋骨上極外縁からが、疼痛も少なく簡便

 

 ・消毒は、1%クロルヘキシジンエタノール液で2~3回消毒

 

 ・患者の状態で異なるが、18Gで穿刺の場合は24時間、23Gより細い針を使用した場合は、12時間は入浴禁止

 

 ・診断ツールとして「時間」を活用する

 

 

備考:

 

・関節注射後の「医原性感染性関節炎」の発生は5例(225,870件中)

 

 

関節内注射の感染予防

 

 1.1 Needle + 1 Syringe + 1 Time =  infections

 

 2.常に常在菌を念頭に置き、手洗い、無菌操作を励行する

 

 3.薬液の準備や針の付け替えなどの時に喋らない

 

 4.感染し易い患者に注意する

 

 5.皮膚の消毒を確実にする

 

 6,感染が疑われれば迅速に病院に転送し、早期に強力な処置をする

 

 7.操作時に誤って汚染したと思われる針やアンプルをスタッフがためらわず捨てるように教育する 

 

 

 


 

実際のレントゲン写真や図解をたくさん用いながら、見落としがちな注意点や判断・鑑別に迷った際の指針などについて、要点を押さえて分かりやすく解説してくださった井上先生。

 

骨折や外傷などの急性疾患から腰痛や五十肩などの慢性疾患まで、特によく見られるものを中心に幅広い症例について、研修生たちの知識が深くブラッシュアップされた時間となりました。ー』。

 

 

 

 

 

 

 

We fortunately held the Special Lecture, a series of additional webinar for reinforcing the registrars’ ability as GPs through the lectures by veteran doctors, the other day.

 

This time, we invited Dr. Takao Inoue, who is the chairperson of the board o Asuka clinic in Masuda city, Shimane pref., and he talked about orthopedics in rural and remote areas.

 

 

Actually, the lecture covered a broad range of topics, such as the current reality of orthopedist in general practice, bone fraction and common traumas, chronic diseases, Q&A session with the registrars, and so on.

 

He had prepared, however, a lot of radiographs that he had took in his daily examination for this session, thankfully enough,.

 

 

Those voluminous visual aids definitely let all registrars comprehend the lecture much easily and successfully fair amount of “water” was poured into their pool of knowledge through the session.

 

 

 

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