『ウェビナー報告日誌「GP Road Map」編 vol.3 ―実践的なカウンセリングスキル―』
オーストラリアの第一線で活躍されるベテランGPのロナルド先生から、毎回一つのテーマに絞ったレクチャーを受けられる『GP Road Map』。
「RGPJ」第三期における最終回となった今回は、「多忙な医師のための実践的なカウンセリングスキル」をテーマとして、日々の診療において直面する多様な状況や症例において、患者に対してどのように対応するべきかについて講義していただきました。
毎度のことながら、今回の講義においてもロナルド先生は、自身の経験に裏打ちされた実践的な知見や助言を惜しげもなく共有してくださいました。
どれも非常に為になるものばかりだったのですが、すべてを紹介することは流石に難しいので、以下にその一部を抜粋したいと思います。
カウンセリングは、しばしば「助言を行ったり、相手の行動をより良い方向へと導くための意見や指導を提供すること」のように捉えられる。
しかしながら、本来のカウンセリングとは、「患者が自身の問題を深く掘り下げる手伝いをするための治療方法」であり、「最終的に患者が、医師から直接の指示を受けることなく自らの行動について決定できる」ようにするものである。
多忙な診療所では、一人の患者に避ける時間が少なくなってしまうため、「短期介入(short intervention)」を活用する必要がある。
また、簡潔で効果的な提案というものは、しばしば患者の行動変容において大きな効果を発揮し得るものとなる。
・抗生物質治療のような明確な治療の選択肢を提示する
・目標(目的)に向かった行動を設定する
・協力的な問題解決法を構築する
・患者が新たな情報や活動について学ぶための教育を提供する
・患者のための成長過程を提示する
・行き詰った状態から患者を動かすための方法を提示する
・患者に活力を与えてやる気を高めてあげる
・問題にきめ細やかに対応する
カウンセリングモデルは無数に存在するため、まずは幾つかに慣れ、特定の状況に適応することから始めると良い。
そうして簡潔なカウンセリング方法のレパートリーを増やしていく中で、最終的に自分自身の「治療方法の選択肢」に加えていく。
「うつ病」や「禁煙」など、慎重に扱うべき状況や難しい問題に対応する際に、とても有用なツールとなる「PLISSIT」カウンセリングモデルを活用すると良い。
– Permission
_相談を受け入れることを明示する。ただし、とても慎重に言葉を選ぶこと。
– LImited information
_患者の抱える問題に関する基本的な情報のみを提供する
– Specific Suggestion
_患者に合わせてより具体的な治療を進めることを考慮し、提案する
– Intensive Therapy
_照会(紹介)も考慮した集中的治療を行う
なお、特定の専門分野に精通している場合を除き、通常ジェネラリストは、最初の三項目までを実施する。
1.Give expression to your emotions.
__自分の感情を言葉にする
2.Talk things over with your friends.
__友人とそのことについて話し合う
3.Focus on things as they are now – at this moment.
__この瞬間、今の状況に集中する
4.Consider your problems one at a time.
__一つずつ問題について考える
5.Act firmly and promptly to solve the problem.
__問題を解決するために、迅速かつ確実に行動する
6.Occupy yourself and your mind as much as possible.
__できるだけ何か別のことで忙しくしたり、頭をいっぱいにしたりする
7.Try not to have a grudge or blame other people.
__何かを恨んだり、誰かを非難したりしないようにする
8.Set aside some time every day for physical relaxation.
__毎日、体をのんびりと休めるための時間を設ける
9.Stick to your routine as much as possible.
__決められた習慣をなるべく守る
10.Consult with your family doctor when you need help.
__助けが必要な場合には、かかりつけ医に相談する
『医療とは、「科学」と「思いやり」とが組み合わさった分野であり、またカウンセリングスキルとは、メンタルヘルスのためだけのものではなく、基本的な「診断道具」である』
最後に、これまでに積み上げてきた経験値の大きさを強く実感させる言葉を研修生たちに贈り、ロナルド先生は最後の講義を締め括られました。
We conducted a regular monthly webinar for generalists, GP Road Map, this month, too. Actually, it was a final round of the series and Dr. Ronald McCoy adopted a theme of Practical Counselling Skills for the busy doctor.
At the beginning of the lecture, Dr. McCoy noted a fact that the definition of “counselling” has often been mistakenly interpreted by people. Then, he provided the “real” definition of the word with the registrars and it was as follows.
– A therapeutic process to help a patient explore their problem.
– The patient can then decide what to do on their own, without a direct order from the doctor.
After that, Dr. McCoy introduced several very effective tools of counselling and shared hundreds of tips on the process of counselling with the registrars. Actually, his advises covered a broad range of topics and those were definitely the products of his long-standing commitment to medicine as a GP.
“Medicine is an art combining science and compassion”, Dr. McCoy said in the last part of the lecture.
In that sense, it could be said that to enhance the counselling skills will be essential for any doctors unless they have no interest in their own development.