『ウェビナー報告日誌 2023「GP Road Map」編 vol.7 ― ジェネラリストのためのプライマリケア症例 ―』
へき地医療の“本場”オーストラリアの第一線で長年にわたり活躍されてきたロナルド・マッコイ先生から、「総合診療の原則」について体系的に学ぶためのウェビナー『GP Road Map』。
今回は症例検討を軸にした形式をとり、一般的な「プライマリケア」への対処・対応をテーマにした講義が行われることとなりました。
以下に、今回の講義から内容を一部抜粋してご紹介いたします。
▷「重要な特徴」
フランシスは33歳の女性保育士で、この二日間ほど排尿障害と頻尿が悪化しています。過去に大きな病歴はなく、また薬も服用していません。
質問1:
病歴を確認する際に、「他に確認されるべき特徴」は何でしょうか。特に重要なものについて挙げてください。
回答1:
・尿路感染症の可能性を示す他の症状
└ 例)血尿、骨盤やわき腹の痛み、発熱
・過去の尿路感染症
・性感染症徴候
└ 例)膣分泌液、性交疼痛
・性遍歴
└ 例)新しいパートナー、避妊なしの性交渉、避妊、妊娠リスク
・アレルギー
備考:
尿に血が混じっている場合、月経によるものかどうかを確認する必要がある。また以前にも尿路感染症に罹ったことのある場合には再発の可能性があるため、過去の病歴を尋ねることが重要。
▷「管理(治療)概要」
診察で質問して確認したところ、過去に重要な病歴や服用中の薬もなく、アレルギーもありませんでした。尿検査では血液、白血球と亜硝酸が検出されたため、「単純性尿路感染症(膀胱炎)」と診断しました。
質問2:
彼女の状態を管理するために最も重要な初期管理には、どのようなものが考えられますか?できるだけ多く挙げてください。また、あなたならどうしますか?
回答2:
・患者に対する「原因と管理、予防についての教育」
・尿検査による微生物の有無や感受性の検査
・経験的抗生物質投与(エンピリック治療)
・尿のアルカリ化
・水分の摂取
・結果を確認し、セーフティネットを張る
備考:
多くの場合には選択した抗生物質で問題は生じないと思われるが、投与の効果と確実性を最大化するために、抗生物質を投与する前に尿検査を実施することが大事。
▷「ヒントと注意点」
・排尿障害をきたすクラミジア尿道炎に気を付ける
・尿路感染が疑われる患者には腹部検診を行う
・男性の尿路感染症の原因として前立腺炎を考慮する
・無菌性濃尿の場合、正確に原因を特定するためのより詳細な検査が必要
・抗菌薬の適正な使用のためにガイドラインを活用する
・無徴候性細菌尿には抗生剤を「使用しない」こと
(妊娠中か泌尿器科関連の処置でない限りにおいて)
・小児や高齢者において、特定の所見がなく誤診断されることがよくある
・「クランベリーが尿路感染症予防に有効」という証拠は限られている
備考:
男性が感染症にかかった場合、前立腺の炎症が問題である可能性を考慮する。また、もし症状があり、かつ尿検査で白血球が検出されているにもかかわらず感染していなかった場合には、例えば「結核」など他の重大な病気が原因となっている可能性もあるため、さらなる検査が必要となる。
発熱のある小児や高齢者において「感染症の原因がわからない」場合には、尿路感染症の検査をする必要がある。なお、小児や高齢者の尿感染症の場合、体調の悪化や発熱、食欲不振が見られることもあるほか、後者には方向感覚の喪失が認められることもある。
早いもので、昨年5月より全10回にわたり実施されてきた『GP Road Map』も来月の講義で最終回。きっと総合診療医としての確かな「土台」が、着実に研修生たちの中に築かれてきたことでしょう。
次回の講義でも症例検討を主軸に、この一年の“総仕上げ”が行われる予定です。
The GP Road Map, a systematical course of lectures focused on the important principles in general practice mentored by Dr. Ronald McCoy, was successfully conducted the other day.
In the session, the registrars participated in case study with special clinical challenges given by Dr. McCoy.
Through the challenge, they deepened their knowledge and conception about primary care and learned how to approach properly toward the patients.
By the way, time flies and the GP Road Map that had begun since the last May would thankfully come to an end with the next month’s lecture.
Through all the sessions thus far, every registrars should have succeeded in constructing a firm and good foundation as a GP in their own.
In the next but the last session, we honestly hope each of them could be going to be capped a great year for them.