『ウェビナー報告日誌 2023「Registrar’s Lecture」編 vol.1 ― リアルな内科診療 ―』

 

内容や形式に囚われない「研修生にとってプラスになる」ことを実践する、研修生の、研修生による、研修生のためのウェビナー『Registrar’s Lecture』。

 

今回は、栃木県立がんセンターより岸川 孝之先生を講師にお招きし、先生の専門分野である「呼吸器内科」をテーマに、「総合診療医として押さえておきたいポイント」に焦点を当てた講義をしていただきました。

 

 

 

以下、今回の講義から内容を一部抜粋してご紹介いたします。

 


 

プライマリケア医に必要な呼吸器診療 ①

 

主な呼吸器疾患

 

 

  感染症

    └ 細菌性肺炎、ウイルス性肺炎、結核、

      真菌、膿胸、肺化膿症 など

 

 

  新生物

    └ 肺がん、悪性胸膜中皮腫、リンパ腫 など

 

 

  閉塞性肺障害

    └ 気管支喘息、COPD、びまん性汎細気管支炎(DPB)など

      

 

  間質性肺疾患

    └ 特発性間質性肺炎(IIPs)、薬剤性肺炎、

      放射線肺臓炎 など

 

 

  アレルギー

    └ 気管支喘息、過敏性肺炎、

      アレルギー性気管支肺アスペルギルス症 など

 

 

  全身疾患に伴う

    └ リウマチ・膠原病肺、

      サルコイドーシス、アミロイドーシス など

 

 

  肺循環器障害

    └ 肺血栓塞栓症、うっ血性心不全 / 肺水腫 など、

 

 

  呼吸器調節障害

    └ 睡眠時無呼吸症候群、肥満低換気症候群 など

      真菌、膿胸、肺化膿症 など

 

 

  その他

    └ 塵肺、外傷、気胸、奇形 

 

 

 

備考: 

 

呼吸器疾患を診るにあたっては、ただ漠然と考えるのではなく、「病態」ごとに分けて考え、検討することが重要。

 

 

 

プライマリケア医に必要な呼吸器診療 ②

 

問診で確認すること

 

 

  経験不足

    └ 季節性は? 空調や加湿器、新しい化粧品やヘアスプレー、新規薬剤の有無

 

 

  1日のピークはいつ?

 

 

  臥位で良くなる?悪くなる?(増悪因子・寛解因子)

 

 

  寝かた、身体の向き(胸水貯留)

 

 

  随伴症状

    └ 心不全徴候、GERD、鼻炎・副鼻腔炎、皮疹、関節痛、ドライアイ

 

 

  家庭内・家周囲の環境

    └ 受動喫煙、ペット、木賊、風通し、ベランダ、水回りのカビ、

      鳩の糞、羽毛布団、鳥類の剥製、農薬噴霧、PM2.5

 

 

  周囲に同様の人は?

 

 

  アトピー素因、家族歴、喫煙歴、職業歴(アスベスト)

 

 

  結核の既往や家族歴(同居歴)

 

 

  検診や直近の胸部写真の有無

 

 

呼吸器疾患を意識した診察

 

意識すべきポイント

 

 

  体型

    └ 肥満があればSASを疑う ⇒ 肥満喘息や心不全の可能性

 

 

  皮膚

    └ 特に手指は必ず見る ⇒ ばち指があれば慢性経過の呼吸不全あり

      レイノー症状、ゴットロン徴候 / ヘリオトロープ疹、皮膚硬化、結節性紅斑

 

 

  咽頭

    └ 咽頭後壁の発赤や粘膜の荒れの有無

 

 

  頚部~鎖骨上のリンパ節の腫大の有無

    └ 同時に、甲状腺腫や皮下気腫の確認

 

 

  胸部聴診

    └ 強制呼気で咳誘発、wheeze聴取 ⇒ 喘息、COPD

      背部聴診 ⇒ ILDsのfine crackles

 

 

  四肢、浮腫、関節炎症状

 

 

 

備考: 

 

 

  ・肥満のある人の50%以上にSASがあると言われている(症状の軽重あり)

 

  ・レイノー症状、ゴットロン徴候など、膠原病の徴候は絶対に見逃さないよう注意

 

  ・聴診時には、「強制呼気」による確認を意識的に実施するとよい

 

  ・前側からの聴診ではfine crackles等を聞き逃しやすいため、背部聴診も実施する

 

 

主な呼吸器疾患

 

部位・分布別

 

 

  局在

    └ 大葉性肺炎、肺化膿症、肺がん、放射線肺臓炎、肺動静脈奇形(AVM)など

 

 

  散在

    └ 気管支肺炎、結核、NTM、サルコイドーシス、COP、薬耐性、肺水腫 など

     

 

  広範

    └ COPD、肺線維症、NSIP、DPB、過敏性肺炎、

      粟粒結核、薬耐性、膠原病 など

      

 

  気管支~細気管支壁や内腔~小葉中心

    └ 気管支喘息、COPD、DPB、

      アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、過敏性肺炎

 

    └ 気道感染

      誤嚥性肺炎、気管支肺炎、ウイルス性、マイコプラズマ、結核、NTM など

 

 

  間質性

    └ 間質性肺疾患、サルコイドーシス、癌性リンパ管症、珪肺、粟粒結核 など

 

 

  ・肺内血管に沿って

    └ 転移性肺腫瘍、septic emboli、AVM、粟粒結核 など

 

 

  縦隔

    └ 縦隔腫瘍(胸腺腫 / 胸腺がん、悪性リンパ腫、サルコイドーシス など

 

 

  肺は正常

    └ 睡眠時無呼吸症候群、肺軟化症 など

 

 

 

備考: 

 

呼吸器疾患の鑑別は症状や診察だけでは難しいため、CT・レントゲン読影が最重要。また、病気によって異なる「画像の特徴」をあらかじめしっかりと把握しておくことも大事。

 

 

喘息発作時の管理

 

急性期

 

 

  ① 重症度の判定

    └ 小発作(間欠期の方針に従う)

    └ 中発作(横に鳴れない)

    └ 大発作(動けない)

 

 

  ② SABAの反復吸入、ICS/LABAの吸入

     └ ぺネトリン0.5ml + 生食

       ※シムビコート2~4吸入/回 をその場でさせるのも有効

 

 

  ③ ステロイド全身投与(ただし効果は遅い)

    └ メチルプレドニゾロン40~125mg DIV、6時間毎

      または 経口PSL0.5mg/kg/日 3日毎に減量(10日前後でoff)

      ※アスピリン喘息には、デキサメタゾン or リンデロン 4~8mg

 

 

  ④ ②の時点で効果乏しい大発作には、アドレナリン0.3mg皮下注を実施

    └ メチルプレドニゾロン40~125mg DIV、6時間毎

 

 

 

備考: 

 

  ・アミノフィリン製剤(ネオフィリン)点滴は、最近の現場ではほぼ用いられない

    └ 有効血中濃度の幅が狭い

    └ 薬物相互作用が多い

    └ 2歳未満の乳児喘息では、6ヶ月未満は原則的に禁止

    └ 6ヶ月以上でも身長投与   など

 

  ・シムビコートに含まれているLABA(β2刺激薬)の立ち上がりが非常に早い

   そのため、SABAの反復吸入より効率的。外来のその場で吸入させるのが有効

 

 

 


 

およそ11年にわたり上五島病院の第一線で「総合診療医」および「呼吸器内科」として活躍されてきた岸川先生には、過去『RGPJ』においても何名もの研修生方の指導をしていただきました。

 

また、昨年末には、岸川先生が主体となって栃木県立がんセンター内に「総合内科」を新たに立ち上げるなど、自分の目指す医療の実現に邁進を続けておられます。

 

 

 

そんな「離島医療」や「総合診療」はもちろん、『RGPJ』のことも熟知する岸川先生ならではの”研修生に寄り添った”講義は、参加した研修生方にとっても非常に実りあるものとなったようでした。

 

 

 

 

 

 

 

The Registrar’s Lecture, which is the webinars of the registrars, by the registrars, for the registrars aiming at enhancing their skills and knowledge as a GP, was successfully conducted, the other day.

 

For the session, we invited Dr. Takayuki KIshikawa from Tochigi Cancer Center as a lecturer and he gave a special lecture focused on his specialty: respiratory medicine and general medicine.

 

 

 

Actually, he had been working at Kamigoto hospital, located in small remote island in Japan, for more than 10 years and also giving training to the RGPJ registrars there. 

 

In addition to that, Dr. Kishikawa had newly set up the department of general medicine in the Tochigi Cancer Center at the end of last year, continuing to pursue the medicine he would like to be realized.

 

 

As he had not only two expert specialties but also considerable experiences of tutoring the RGPJ registrars and the medicine in remote island, every registrars were fortunately able to absorb plenty of wisdom throughout his RGPJ-conscious session. 

 

 

 

 

 

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