『ウェビナー報告日誌 2022「Registrar’s Lecture」編 vol.1 ― 呼吸器科と地域医療 ―』
症例検討にディスカッションから特別講義まで、研修生の、研修生による、研修生のためのウェビナー『Registrar’s Lecture』。
今回は、木庭先生と高岡先生が発表者を務め、それぞれ「呼吸器科」と「地域医療」とをテーマに、講義を行っていただきました。
以下に今回の講義から一部抜粋してご紹介します。
Q.医学的な理由で手術ができないI-II期非小細胞肺癌に対して、根治的放射線治療は勧められるか?
A.推奨
根治的放射線治療の適応があり、行うよう推奨する。
Q.医学的な理由で組織診(もしくは細胞診)および手術ができない臨床的に原発性肺癌と診断された孤立性肺腫瘍(組織未確定)に対して、根治的放射線治療は勧められるか?
A.推奨
臨床的に原発性腫瘍と診断された孤立性肺腫瘍(組織未確定)に対して、根治的放射線治療を行うよう勧めるだけの根拠が明確ではない。
▷ 喘息ではLABAは単剤使用しない
・2006年のメタアナリシスにおいて、LABA単剤は入院を要する喘息増
悪や死亡率を上昇させたと報告あり
・「ICSの使用なしにLABAを使用することを禁忌とする」という過去に発信されたFDAのアラートあり
1.好酸球性気道炎症を抑制できない
2.β受容体のダウンレギュレーションを引き起こす
3.喘息増悪時の低酸素血症時、β刺激薬の心血管系への影響大
・問題なのは、「喘息と分かっているのにICSを使用しない」こと
・慢性気道感染を併存しているCOPDにも推奨
(“咳嗽・喀痰の診療ガイドライン2019″)
・COPD増悪抑制効果は、
1.気道炎症抑制
2.喀痰分泌抑制
3.細菌病原性抑制
4.抗ウイルスなどの作用による
・マクロライド系耐性菌検出頻度に変化ないとする報告あり
・NTM症には要注意
・メジコン8錠分4
・麦門冬湯
・シロップやハチミツ
(甘みを感じる神経が席を抑える?)
備考:
▷ 麦門冬湯について
C繊維の抑制を介する機序などが想定されている。
9つの無作為化対照試験のメタ解析では、多くの研究で方法論に問題があったものの、感染後咳嗽には古典的鎮咳薬に比し有効性が認められた。その他の疾患(COPD、肺癌術後、喘息など)では結果は一定しなかった。
・痰の切れが悪い ⇒ ムコソルバン
・痰が多くて困る ⇒ ムコダイン
今回の講義において、木庭先生はご自身の専門領域でもある「呼吸器」について、豊富な経験と知見の共有を。高岡先生は、今年4月に上五島に赴任されてから実際に体験した事例を題材に、「地域医療」における「人や地域との”つながる”ことの難しさ」をテーマに、ディスカッションを発起・進行されました。
二つの大きく経路の異なるセッションを通じては、「頭」と「心」、あるいは「知識」と「思慮」とでも言うべき”善き医師の両輪”が存分に刺激されることとなったようでした。
The Registrar’s Lecture, a webinar of the registrars, by the registrars, for the registrars, was again conducted, this month too.
In the session, Dr. Taro Koba and Dr. Sachi Takaoka played a role of the presenters, then they talked about pulmonology and community health care, respectively.
Actually, Dr. Koba has been a specialist of pulmonology, so his lecture focused on sharing his knowledge and tips about some typical diseases that are also common in general practice.
On the other hand, Dr. Takaoka presented a discussion in her session. The theme was “association between people(patients) and community” and she led the discussion introducing a case example that she recently experienced in the Kamigoto Island.
Anyway, it seems necessary for “good doctors” to acquire not only plentiful knowledge but also adequate discretion.
In that sense, those two sessions definitely stimulated the “both wheels” in every registrars.