『ウェビナー報告日誌 2022「Rural Skills」編 vol.4 ― 泌尿器科 ―』
様々な診療科の第一線で活躍されているベテラン専門医から、「総合診療医として役立つ実践的な手技や知識」について学ぶためのウェビナー『Rural Skills』。
今回は、海老名総合病院から小林 博仁先生をお招きし、「泌尿器科」について講義していただきました。
以下に、今回の講義より内容を一部抜粋してご紹介します。
▷ 特徴
・起炎菌は主に「直腸常在菌」
・尿路に上行するかたちで感染
・症状:頻尿、排尿時痛、残尿感(発熱はない)
備考:
発熱がある場合は「前立腺炎」や「精巣上体炎」、「腎盂腎炎」を考える
(膀胱は袋状であり、実質的に「臓器」ではないので熱は出さない)
▷ 前提
・グラム陰性桿菌80%以上(E.coliが90%以上を占める)
・ESBL産生菌の70%は、キノロン耐性
・第三世代セフェムを吸収率が低い
▷ 処方
1.急性単純性膀胱炎(閉経前)
LVFX(クラビット) 3日間
セファクロル、オーグメンチン 7日間
ST合剤 5~7日間
2.急性単純性膀胱炎(閉経後)
CCL、CVA/AMPC 7日間
LVFX 3日間
ESBL産生菌には FOM 2日間、ファロム 7日間
3.ESBL産生菌による膀胱炎
オーグメンチン 7日間
ST合剤 5~7日間
▷ 鑑別疾患
・尿路結石
・間質性膀胱炎
・膀胱がん など
⇒ 繰り返す場合には、残尿過多がないかなど「排尿障害の有無」をチェックする
備考:
・閉経前の女性の場合、ESBL産生菌の割合が非常に少ない場合が多い
・閉経後にはESBL産生菌や耐性菌の割合が増えるため、キノロン系はあまり処方しない(オーグメンチンなどは、一つのおすすめ)
▷ 尿管結石嵌頓の治療
1.腎盂内圧の上昇による疼痛
NSAIDS:座薬、内服
ペンタゾシン:点滴、筋注
2.尿管攣縮
臭化ブチルスコポラミン:点滴、内服
▷ 尿管結石の手術
・「10mm未満」までの結石は、自然排石が期待できる
・有症状後、1ヶ月が過ぎても排石されない場合は、積極的治療介入を検討
備考:
・尿路結石はほぼ「カルシム結石」で、自然に体内で解ける可能性は低い。
・結石が膀胱にまで落ちると基本的には閉塞を伴わないため痛みを感じない。
激しい疼痛発作がある場合には、基本的には尿管結石。
・10mm未満でも10mmに近付くほど排石されづらくなるため、基本的には手術を考える
▷ PSA(前立腺特異抗原)とは
前立腺上皮細胞から分泌されるタンパク。多くは精液中に分泌されるが、ごく微量が血液中にも取り込まれる。
・前立腺がん
・前立腺肥大症
・前立腺炎
・射精
・尿道操作 などにより数値が上昇する
▷ 前立腺生検での検出率
PSA値におけるグレーゾーンは、「4-10 ng/mL」。この水準において、がんが検出される確率は「20~30%」程度。
PSAの値が高値になるほど検出率は上昇し、進行がんの確率も上昇。「100 ng/mL」にもなるとほぼ確実に癌があり、どこかに転移しているような状態。
備考:
・PSAのカットオフ値は「4.0 ng/mL」が基準。年齢によって「3.0~4.0 ng/mL」とされることもある。
・PSAの値が「二桁以上」ある場合には要注意、と考えておいた方がよい
▷ 定義
・顕微鏡下で「5個/HPF」以上
・尿1Lに血液1mL以上が混入すると「肉眼的血尿」
▷ 肉眼的血尿の疾患
・尿路上皮がん(腎盂・尿管・膀胱)
・腎がん
・前立腺肥大症
・腎動静脈奇形
・腎梗塞
・糸球体疾患
・尿管結石
・出血性膀胱炎
・特発性腎出血
備考:
・肉眼的血尿の大部分は、泌尿器疾患に由来する
最後に設けられた質疑応答の時間でも多くの質問が矢継ぎ早に飛び交い、結局は当初の予定より時間が押して終了することとなった今回。
泌尿器科という領域の特殊性・難しさと、またそれにより日々の診察においても泌尿器疾患への処置に苦慮する場面が多かったことの伺える興味深い一幕でした。
The Rural Skills, a regular monthly webinar for encouraging RGPJ registrars to fill the gap between actual needs and abilities they actually have as GPs , was successfully conducted the other day.
For this session, we invited Dr. Hirohito Kobayashi from Ebina General Hospital and he gave a lecture about urinology.
Interestingly enough, many questions from the registrars buzzed in the Q&A session at the end of the lecture, and it seemed the opening of another lecture rather than a mere Q&A session.
Anyway, the session went past its scheduled closing time eventually. The fact showed us the peculiarity and difficulty of urinology; thus every registrars couldn’t help but hurling questions at Dr. Kobayashi to clime over their “wall”.
All thanks to both dedication of Dr. Kobayashi and their positiveness, the registrars accumulated fruitful experiences through the session, as a result.