学会本部に乗り込む
~オキドキ!へき地医療の先進国から~ Okidoki-Rural Medicine
オーストラリアのRural Generalist になるには、
(格式高い)RACGPか
(新参者の)ACRRMの
どちらかの認定を受ける必要がある。
今回はACRRMのCEOであるMaritaに会いに行く機会を得た。(写真中央)
クロアチアで会ったので2回目ではあるが、こんなに早く再会が実現するとはお互い予想だにしていなかった。
ACRRMは1997年に設立され、Maritaは初代CEOである。
元々はRACGPの職員だったが、Rural Generalist の研修制度に疑問を感じ、オーストラリア全土のRural Generalist ら700人と新しく学会を結成したのである。
その当時の話は非常に興味深く、僕自身も身を前に乗り出して聞いていた。
気が付くとMaritaの目には涙がたまっていた。
胸が熱くなる話であった。
昼食を忘れて2時間近く話し込んでいた。
ACRRMのofficeは常時60人程度が働いていて、今回の視察に際しては、
それぞれの専門家
Training and Assessment ManagerのLynn Saul と
Online Service ManagerのLex Lucasが
1時間程度プログラムとeLearningについて説明してくれた。
ACRRMのプログラムは4年(Registrar)で、日本の初期研修にあたるInternは1年のみなので、計5年間は研修医扱いとなる。
それが終わると、だいたいの研修医がAHPRA(Australian Health Practitioner Regulation Agency)の認可を得たSpecialist General Practitionerになることを希望する。
つまりACRRMのFellowship(FACRRM)に進むわけだ。
Registrarは1年間は都会の大病院で、内科・外科・救急・麻酔・小児・産婦人科といったCore Clinical Training(CCT)を学ぶ。
そして次の2年間は、Primary Rural and Remote Training(PRRT)と呼ばれる、病院・診療所・原住民の医療・そしてRFDS(フライングドクター)の研修を受ける。
診療所と病院とを切れ目なくみる、Patient Journey について回ることは非常に勉強になる期間であるとMaritaも力説していた。
このような診療所と病院と自由に行き来できるプログラムは世界でもオーストラリア、カナダ、南アフリカの3か国しかないらしい。
そして注目すべきは最後の1年間。
これはAdvanced Specialised Training(AST)と呼ばれ、
- 麻酔
- 産婦人科
- 総合外科
- Population Health
- Remote Medicine
- 救急
- Aboliginal Health
- 内科
- 精神科
- 小児科
- Academic Practice
の計11科目からひとつだけ選んでSubspecialityを身に付ける期間が設けられている。
それ以上の技術を身に付けたいResistrarはさらにFellowshipへ進み、つまり、へき地ではもちろん他の技術も必要とされるので、ほとんどがFellowshipに進むという流れなのだ。
ACRRMはRACGPよりも、手技重視の認定で、よりへき地志向が強く、つまりGP-Procedualistが多く排出されている。
ACRRMかRACGPの枠は来年度1500あり、応募者は2200人いるそうだ。
合格できないInternは受かるまで専門資格を持たない医師として、安月給で病院で働くことになる。
では医師は過剰なのか?オーストラリアでも医師偏在は大きな問題であり、Rural Generalist の専門医を取得した後は、やはり都市部の病院に戻る医師もいるらしい。
これが問題で、いかにへき地に適したInternかを見極めるIndicatorを研究しており、よりへき地に滞在できる方策を学会や政府は常に考えている。
長年へき地に住んだいう経験は、将来へき地に残る大事な要素であるらしく、そのような経緯からRural Clinical Schoolが設立された。
面白いデータがある。
ACRRMを第一希望に書くInternは第2はRACGPではなく救急(Emergency Medicine)を、3番目には麻酔(Anaesthtics)を、そして4番目にRACGPを書くというのである。
これは、ACRRMがいかに外科系にシフトしているかを物語っているデータでもある。
明日は、RACGPのNatinal Rural Facultyが指導する、Emeraldを視察してきます。