地域に必要とされるもの
長崎県の対馬病院と上対馬病院に伺った。
対馬は長崎県であるが、福岡までのアクセスがよいため、生活圏は福岡である。
よって、地域住民も島外搬送は福岡を希望される。
また同時に、福岡の医療と比較されることが多いとのこと、離島の総合病院であってもスペシャリストが必要とされるらしい。
一方、対馬病院から北に50㎞、約1時間半かけて車を走らせると、上対馬病院がある。
常勤医は4名のみで、上対馬の住民を守っている。こちらは明らかなジェネラリストが活躍する病院である。
当直の先生が案内して下さった。
「先生は上対馬の前はどちらだったんですか?」
「アフリカです」
「えっ?」
「医務官としてブルキナファソに3年間いました。人生変わりました」
「その前は?」
「大阪の救命センターです」
「その前は?」
「愛知で新生児と小児を診ていました」
「途上国と離島、なぜ我々は憧れるのでしょうか?」
「きっと、住民が好きなのでしょう。医療の程度は違いますが…」
離島へき地プログラムを地で行く先生に、こんなところで巡り合った。
もう韓国まで50㎞のところである。10分程度の立ち話だったが、魂が震えた。
前日の対馬病院でも、産婦人科の先生の話に震えた。
「旦那が麻酔をかけて、私が手術をして。そして指導医に夫婦共々怒られて…」
「3日に2日はオンコールですかね」
ここ対馬には、全身管理も、皮膚も、心も、そして女性をすべて診ている若い産婦人科医がいる。
離島では当たり前のことなのかもしれないが、それにしてもすごい。
途上国で研修するプログラムに、気に入ったキャッチコピーがある。
「きみの変態を支援」
変態と言われて、ちょっと「にやっ」としたあなた、離島へき地プログラムに向いていますよ~(笑)!
帰り道、田舎の集落にスーパーがあった。その名も、スーパー「まるみや」。
入ってみると、灯油をくみ上げるポンプや懐中電灯など、一般的なスーパーとは異なる。
「この集落で必要なものを置いているんです」ご主人が言った。
医療も全く同じだ。自分の得意分野で勝負するのではなく、地域に必要な医療技術を揃えるべきだ。
それには地域に出て行かないと、どのような医療が必要なのかは、病院で待っていてもわからない。