高知県 柚子の里馬路村

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今回も恒例のお出迎え人形が、

役場の前のバス停に座っていた。

粋な演出である。

 

演出家は役場の木下彰二さん。

柚子を思わせる爽やかな人物である。

 

屈託のない笑顔は、人はこうあるべきだと教えてくれる。

木下さんは人の喜びを活動力にしているのだろう。

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昼過ぎから始めたBBQには木下さん、診療所の中川先生夫婦、

近森病院の杉本先生が参加してくれた。

 

木下さんが持参してくれた安田川の天然鰻、

天然鮎はこの上なく絶品である。

さらに木下家自家製の蜂蜜を焼いたパンにたっぷり塗る。

なんと贅沢なBBQなのか。

 

ビールの空き缶が見る見るうちに増えていくが、

友人の衣川順志がその缶を2つ繋げミニ燻製器を作る。

桜チップ、月桂樹、ザラメ砂糖で燻された、

チーズ、ナッツ、ウインナー。

これもまた美味い!

 

日が暮れた頃、ビール片手に役場へと向かう。

役場の隣の会館でピアノ演奏を披露することになる。

ベートヴェンの「悲愴二楽章」、

グルダの「アリア」、

ショパンの「ノクターン遺作」

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ほろ酔い散歩の次の目的地は診療所。

 

今年4月にリニューアルされた診療所は、

へき地とは思えない現代的な建物だった。

開放感に満ちた空間は居心地が良い。

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診察風景を撮りたいとお願いしたら先生と順志が小芝居をしてくれた。

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カーテンの隙間から幽霊のように覗いているのは杉本先生。

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ほろ酔いゆえの幼稚な行いを神聖な場所でしてしまった。

申し訳ない。

 

中川先生と初めて会ったのは4月に馬路村を訪れた時。

木下さんが用意した鰻を慣れない手つきで焼いていた。

そのとき中川先生は「いずれ紛争地で働きたい」と言っていた。

 

今回その話題を振るとさらに言葉を足してくれた。

「医者が必要なのに行く医者がいない。そのような場所で自分の経験を活かしたいのです。

それが紛争地でも構いません」

 

中川先生は新婚一年目。

私は奥さんに馬路村の生活を聞いてみた。

「私は田舎で生まれたので、ここでの生活に何一つ不満はありません。

村人が採れたての野菜や果物を持っていけ持っていけって。毎日が楽しいです」

 

奥さんは美容師だったが、現在は社会福祉協議会に所属して患者さんの送り迎えをしている。

送迎車に乗ったおばあさんはこれでもかと、奥さんに話を聞いてもらうらしい。

それと同じ話を診察室で中川先生が傾聴する。

時には30分を超えることもあると、二人は笑っていた。

 

ここ馬路村診療所には都会の病院では困難な、患者さんと接する時間が流れている。

きっと、この若い二人は馬路村に柚子のような清々しい風をもたらしただろう。

 

中川先生が「紛争地でも構いません」と発言した時に、

その言葉をじっと聞き、頷いていた奥さんの表情が印象に残っている。

是非夢に向かって走り続けて欲しい。

 

8年前、私は歩き遍路にチャレンジした。

徳島県の一番霊山寺から香川県の八十八番大窪寺までの約1200キロを、

40日かけて歩き通した。

徳島県は発心の道場で、高知県は修行の道場と呼ぶ。

何故、高知県は修行なのか。

それは距離に対して寺数が少なく、

徳島県では一日に六か所の寺を打ち終えることができたが、

高知県では次の寺まで70キロ歩くことを強いられる。

まさに忍耐を求められるのである。

 

太平洋を左手に見ながら歩き続けていると、

高知県の独特な風土に気がつく。

 

広大な太平洋に面し四国山地に囲まれている高知県は、

瀬戸内海に面している県とは異なる風土が生まれる。

隔離された地。それが高知県の歴史を物語る。

長宗我部元親や近代化の礎を築いた勤王の志士らの活躍には、

このような地理的条件が背景にあるのではないだろうか。

 

そしてその高知県の中でもさらに隔離された地が馬路村である。

平成の大合併には属さず自立の道を歩む。

柚子加工品の売り上げは30億円に達し大成功を収めているが、

村の財政力指数はけして高くはない。

10年前は1140人だった人口が現在は944人に減少している。

 

馬路村の未来はどうなるのか。

 

高知県を訪れる観光客の目当てとして坂本竜馬は大きな存在である。

しかし木下さんは、いつまでも竜馬に頼っていては駄目だと言う。

それは過去にしがみつくのではなく、もっと未来を創造すべきだと解釈できる。

 

早朝6時半から始まる温泉に2日続けて入った。

安田川のせせらぎを聞きながら何とも言えない幸福感に包まれる。

「また鰻と鮎を食べたいな」

思わず独り言がでてしまう。

そのためには、0120-559-659で馬路村の特産品を注文しなければ。

 

 

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