アピールせよ!大分
国東半島先端、伊美港から村営フェリーで20分の所に姫島はある。
周囲17キロの小さな島だが人口は1988人。
伊美港のフェリー乗り場には大きな月極駐車場があり、
都市部へ出る島民の足になっている。
姫島に着くとフェリー乗り場の前に小さな公園があり、
そこに見知らぬ人の銅像が建っていた。
その方は前村長の故藤本熊雄氏。
姫島の恩人と銘文に記されていた。
1959年、島の基幹産業の塩田が国の方針で廃止になり、
車エビの養殖事業に着手する。
現在では日本一の養殖場となっている。
この立役者が藤本熊雄氏であり現在の村長は長男が務める。
驚いたことに姫島では村長選挙が1955年から一度も行われていない。
藤本親子に対立する立候補者がいないのである。
選挙は民主主義の根幹だが、
小さな島では禍根を残し島民の間に大きな溝をつくることにもなる。
本土の人間には理解できない島の事情があるのかもしれない。
島内を散策すると住宅が密集し離島であることを忘れてしまう。
診療所には内科、外科、小児科、整形外科、眼科、歯科があり、
小さな離島では充実しているといえる。
また1980年代に始まった地域包括医療・ケアは確実に成果を上げている。
伊美港から1キロ程の「道の駅くにみ」では、
姫島の車エビ料理を食することができる。
“車エビづくし”は刺身、塩焼き、天ぷらなど6匹がついてくる。
値段は3000円弱だが東京ではありえない。
国東半島には宝塔が500基ほどあるが、
独特な台座を有し、国東塔と呼ばれている。
以前紅葉時期に両子寺を訪ねたが京都の寺を越える見事さであった。
その他にも熊野磨崖仏、
富貴寺、
真木大堂など史跡好きにはたまらない地である。
真木大堂を下ると杵築市山香に出る。
杵築市立山香病院の小野院長をゲネプロメンバーで訪ねた。
病院に入ると正面の壁に診療医師の写真が飾られている。
真っ先に目に飛び込むのは総合診療医が6名いることだ。
小野院長は病院のHPで総合診療についてこのように語っている。
近年、医師も専門医への意識が高まり、何でも診る医師の存在が軽視される傾向にあります。昔は“赤ひげ先生”のように地域に密着し、どんな時でも断らない医師が大切にされてきました。しかし最近では、医学の進歩からか、多くの医師が専門性の高い医療を求めるようになってきました。患者さんも病気になれば必ず専門医へと言う固定した考えが根付いてしまいました。都会で問題になっている救急車のたらい回しも、専門性の重視が大きな一因にもなっていると思われます。一部の救命救急を除けば、医療への見識が深く、バランスの良い知識をもった総合医がまず判断をして、必要が有れば迅速に専門医に紹介する方法が望ましいと考えています。自分の専門領域を外れれば一切興味を示さず、簡単な診療ですら拒む医師が急増しています。多疾患が併存すれば、お互いに押し付け合い、さらに境界疾患は見落とされる危険性さえ有ります。 イギリスでは、かかりつけ医制度が徹底し、質の高い総合医GP (general practitioner)がまず診断し、必要時のみ専門病院を紹介できる制度が確立しています。GPはイギリスでは尊敬される医師として位置づけられています。1,000人の一般市民を1ヶ月追跡すると、750人が何らかの疾患に罹患(りかん)し、医師の受診を必要にするのが250人、入院が9人、専門医の紹介が必要な患者が5人、大学病院への紹介が必要なのはたった1人と言う報告がなされています(White KLら、N Engl J Med 1961)。その後も何度も追試され検証されています。つまり、多くの患者は、最初から専門医を受診するのではなく、まず総合医が診察するべきであると考えます。 一般には総合医は病院総合医と言われる総合内科が主体ですが、私が考える総合診療科の総合医は、内科全般に加えて、多くの外科救急に対応できる救命型総合医を想定しています。外科、整形外科、脳外科等に広く精通する事が必要です。さらに、緩和治療や補完代替医療にも関心を持つべきです。保健・予防医療、介護、福祉にも広く理解があり、地域医療に向けて、最大限に医療資源を活用できる医師像を考えています。まずは総合診療科を受診いただき、その後の診療方針を決定する役目を考えています。
そういえば、下甑島の瀬戸上先生、上五島の八坂院長、
そして小野院長と、みんな外科出身である。
離島やへき地で戦える医師になるためには、
外科→総合診療という流れが最も適しているのかもしれない。
この日は小野院長の奥様の手料理に舌づつみを打ちながら、
中津の幻の純米焼酎を頂いた。
杵築市の城下町は味わいがある。
お城に向かう谷町通りを挟み込むように高台に武家屋敷が立ち並び、
サンドイッチ型城下町と言われている。
この様式は日本で唯一の物である。
別府のシンボル的温泉、竹瓦温泉は今時珍しい100円という価格である。
別府にはこのような共同温泉が至る所にある。
齋藤学が蛇口やシャワーのない風呂に戸惑い、
湯船のお湯で頭を洗っていたのが可笑しかった。
臼杵市の石仏も一見の価値がある。
25年前は石仏の頭が台座に置かれていたが、
今は復元され立派な公園になっている。
街並みも造り酒屋や醤油工場などの古き良き時代を彷彿とさせる。
佐伯市の「歴史と文学の道」も情緒がある。
大分には湯布院、福沢諭吉の中津市、宇佐八幡、耶馬渓、
昭和レトロの豊後高田市など見どころが満載である。
しかし全国的知名度はけして高いとはいえない。
個人的には静寂とした街並みを好むが、
行政や観光協会はこのポテンシャルを理解しているのだろうか、
もどかしさを覚える。
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