卒業生 松原 祥平 先生
忘れられないカンボジアでの経験不足。医療資源が乏しい環境であっても幅広く診療できる医師になりたい。
松原 祥平
Syouhei Matsubara
ゲネプロ4期生
卒業年度 | 2013年 |
---|---|
研修参加時 | PGY8 |
専門分野 | 消化器内科 |
研修病院 | 高知・大井田病院 |
卒業後 | 研修後も継続的な研鑽と臨床研究の為、大井田病院で2年間勤務。その後は空港の検疫所などさらに活躍の場を広げている。 |
貢献できない… カンボジアでの苦い思い出
ゲネプロに応募してくださった経緯を教えてください
もともと都会の急性期病院で消化器内科を中心に診療を行っていました。
医師5年目の時にJapan Heartという国際医療NGOを通して1週間だけカンボジアでの診療を行なったことがあります。医療資源が乏しい環境下とはいえ、経験不足、ほぼ内科の知識しかなかったこともあり何も貢献できず、苦い思い出となりました。
日本に帰国後、経験を積んだことで環境が整っている大きな病院であれば、出来ることがどんどん増えていきました。しかし時折、カンボジアでの経験が思い出され、医療資源が乏しい環境であっても幅広く診療することが出来る医師、まさにDrコトーのようになりたいと考え、へき地医療に興味を持ちました。
未経験の手技にDrヘリ… 挫折せずクリア!
研修先の大井田病院は、院長が外科/救急の先生でしたよね
そうですね。外傷、耳鼻道異物、鼻出血、粉瘤、脱臼、骨折、妊婦健診、小児科などなど、私の弱点であった内科以外の幅広い分野について学ぶことが出来ました。
また訪問診療、Drカーでの現場出動や船で1時間程度にある沖の島での離島医療、検死など病院外での業務に従事する事も出来ました。
私の場合は幸運にも高知市の急性期病院で3ヶ月間Drヘリ勤務もさせていただき、とても貴重な経験でした。とはいえ、初期研修以来の手技や未経験の手技が多かったので、最初はなかなか手が出ませんでした。
ですが、田中先生の指導である程度実力に応じた難易度のチャンスを与えていただけました。少し難しい症例は隣でアドバイスもいただけたので挫折せず済みました。また私の場合は同じ病院に研修に入ったゲネプロ同期が外科の先生だったため、小さなこともよく質問出来たのも大きかったと思います。
ウェビナーは良い頭の切り替えに
毎週水曜の夜にはゲネプロのウェビナー。大変でしたか?
正直、疲れている日や仕事が残っている時は「ウェビナー出るの、きついな〜」と感じることもありました。ウトウトしている時もあったかもしれません。
しかし日々目の前の業務に追われていると、どんどん視野が狭くなってしまいます。ゲネプロのウェビナーに参加して他の病院の同期や様々な講師と接点を持つことで良い頭の切り替えになりました。頑張って参加して良かったです。
また一般的なオンラインの勉強会と比較して受講者も少ないので細かい質問もしやすく、より理解が深まりました。
もっと修行したい!居心地のいい宿毛で
1年の研修が終わった後も、自主的に大井田病院に残りましたね。
そうなんです。高知県の宿毛市が本当に住みやすく、居心地が抜群に良かったんです。なんと地元に友達もできました。
はじめの1年間では幅広い経験をさせてもらえ、指導医がいる状況ではかなり出来ることが増えました。しかし学んだ手技などを一人で実践するとなると、トラブルシューティングや困難症例の対応に不安が残ったので、もっと修行させていただくことに決めました。
またコロナ禍で開催中止となっていた災害時の訓練やシュミレーションコースが、大井田病院に残れば参加でき、貴重な経験が出来るのではないかと感じたからです。
3年の修行を経て再びカンボジアへ
再び挑戦したカンボジア。修行の成果はどうでしたか?
3年間にわたる大井田病院での経験後、再びJapan Heartを通してカンボジアへ行きました。
その時は、内科外来のみならず外傷や皮下膿瘍などの対応、粉瘤や脂肪腫のちょっとした外来オペなどを主に1人で実施することができ、初めてカンボジアに来た時に感じた無力感を払拭することが出来ました。
また、今まで経験したことがなかったひどい化膿性乳腺炎に対しても、その場で調べつつも切開排膿などの対応が出来ました。未経験の事象に対して今までの経験を応用して対応することが出来たのは、へき地での経験があったからだと思います。自身の成長を実感することが出来て、とても嬉しかったです。
実は何回かカンボジアで困った時に大井田病院の田中先生にメールで助けてもらったりもしていたのですが。
都心にいながら離島へき地の経験が役立つ日々
現在は羽田空港の検疫所やクリニックで勤務されているそうですね
はい。羽田空港の検疫所では海外から日本へ入国する旅客に対して、海外特有の感染症を持っていないかの判断をしています。そこではゲネプロの選択研修で行った長崎大学での熱帯医学の知識が大いに役立っています。
また飛行機内や空港内で急病人が発生した場合に出動することもあるのですが、その時は医療資源が乏しい環境で働いた大井田病院での現場出動や離島診療での経験が予想外に役に立っています。
ゲネプロに在籍中に「将来使わないかなぁ」と思ったこともありましたが、色々経験して良かったとしみじみ感じています。
また、週に1回程度クリニックで外来診療も行っているのですが、巻き爪の処置や小児科診療、乳幼児健診、内科を受診した妊婦さんへの胎児エコーなども行っています。
まわりには病院はあります。でも、周囲に紹介しやすい医療機関がなかったり、患者さん自身がほかの医療機関を受診したがらないこともあります。都心にいながらも離島へき地での経験がかなり役立っています。
より柔軟な選択が出来るように
プログラムに応募しようか迷っている先生にメッセージをお願いします
私自身ゲネプロに参加して一番良かったと感じている点は、今まで知り合えなかったタイプの人脈ができたことです。
様々なバッググラウンドをもつ同期たちやOBOG、そして指導医。この出会いを通じ、進路のより柔軟な選択が出来るようになりました。
実は医療系以外のスタッフとの出会いにも大変感謝しています。人生の相談に乗ってもらったり、違ったものの考え方や気付きを与えていただいたり…。現在もその方々をよく頼っています。
へき地では専門家が少ないため、幅広い症例を自分で対応しなくてはなりません。ゲネプロ内であればすぐに質問できるので、困ったら聞ける点も安心です。また他に医療機関が少ないため、自分で対応した患者さんが良くならなかったら自分の外来に来てくれやすいのもフィードバックを受けやすく、成長しやすい点かと思います。
医学の知識・技術の成長はもちろんのこと、人として成長するきっかけをゲネプロは与えてくれると思います。迷っている先生方はぜひ!
選択研修で行った長崎大学の感染症内科(熱研内科)の経験や、研修先の高知県宿毛市の良い点など、松原先生のインタビュー全編もぜひ参考にご覧ください。