卒業生 岩谷 健志 先生

上五島での自宅看取りの経験がクリニック開業の原動力に

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岩谷 健志

Kenshi Iwatani

ゲネプロ4期生

卒業年度 2012年
研修参加時 PGY9
専門分野 救急科専門医、認定内科医
研修病院 長崎・上五島病院
卒業後 救急医療の現場に戻るも「自宅で治療を受けたい」という患者さんの声を多く聞き、地域を存続させるために必要な在宅医療という視点で2022年7月に在宅医療クリニックを開業。

人口800人ほどの離島出身  目指してきた夢を実現

ゲネプロの研修に応募したきっかけは?

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私が育ったのは宮崎県にある小さな離島(延岡市島浦町)、人口800人くらいの何もない小さな島です。医師を志したのは小学生の頃で、幼いながらにへき地の医療の大変さ、脆弱さ、またやりがいを感じていました。

ところが、医学部に入って、医師として年数を重ねるごとに「へき地の医療現場で働くことを目指す」ことがだんだんマイノリティになってきました。同じような夢を持っていたはずの周りの仲間が専門の道へ向かっていくのを見ながら「自分はこのままでいいのだろうか」と夢に疑問を持ち始めていたんです。

そのときにたまたま救急医のメーリングリストにゲネプロ説明会の案内が送られてきたのが応募のきっかけです。

へき地で通用する? ワクワク感でいっぱい

従事していた救急医療への未練はなかった?

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私の場合はへき地で戦えるように、というモチベーションで救急医療を勉強してきたので未練はありませんでした。実際にへき地に行ってどこまで通用するのか、どんな課題がでてくるかという「ワクワク感」が大きかった気がします。

当時は専門医をとって医師10年目くらい。年数の若い頃と比べると医療で大きな感動や成長を実感する機会が減っていた頃でした。

ところがゲネプロの研修では分からないことだらけ。自己嫌悪にもなりましたが充実感が大きかったですね。検査や治療の組み立てや日常生活へと繋ぐ医療、そして日常生活を続けていくための医療介入など日々学ぶことが多かったです。

スーパーなどに行くと、患者さんから声をかけられて自分が処置した傷の経過を見せられたり、以前処方した薬の文句を言われたり(笑)、そんなことも心から楽しめた(勉強になった)と思います。

家族みんなで楽しんで、論文執筆にも挑戦!

離島での生活はどうでしたか?

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研修に行った上五島には妻と3人の息子と一緒に行ったんですが、家族みんなで楽しみ尽くしました。地元の島に比べ上五島はお店もたくさんあって妻は感激していましたね(笑)。子供たちも毎日自然の中で楽しく忙しく過ごしていました。「また住みたいね」って家族で話すほどです。

上五島での研修に慣れてくる中で「何かこの経験を形にしたい」という気持ちがでてきました。病院の同僚やゲネプロの方たちにも協力してもらい、論文を執筆。なんとか学会発表まではこぎつけられました。仲間の大切さを痛感しました。

今後も研修病院や期の違うメンバーと一緒にデータを集めたり、なにか形にできれば、おもしろいですね。

上五島の経験がクリニック開業の原動力に

研修で印象に残っていることはなんですか?

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ある神経難病の方を自宅でお看取りしたことがとても印象深かったです。当時の私には「入院中の状態の悪い方を自宅で看取る」という概念がそもそもなかったので、ご家族が自宅看取りを希望された時はかなり戸惑いました。

病棟や連携室の看護師さんが背中を押してくれて、医局の医師たちにも手取り足取り教えてもらって、在宅医療にこぎつけました。この方に限らずですが、自宅看取りの空気感、家族の表情、家の匂い…。良い意味で衝撃を受けました。救急外来や集中治療室で看取る経験が多かった私にはとても新鮮で、看取ることの概念が変わった瞬間でもありました。

純粋に「こういう医療が地元にあったらいいな」という気持ちが原動力になり、2023年に地元(宮崎県延岡市)で在宅クリニックを開業することになりました。

50年後も維持できる「へき地医療」を

今の診療の中で、研修は活かされていますか?

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はい。ゲネプロで地域を包括的にみる視点を学べたことも、開業に繋がったと思います。それまでは自分が1プレイヤーとして例えば地元の島にもどって住民を救う、みたいなイメージでいました。

実際はそうじゃなくて、30年後50年後にその地域の医療をどう維持していくのか、自分がいなくなったとき・病気になったときにシステムとしてその地域をどう支えるのか、全国各地に散っているゲネプロ同期の話やオーストラリアの話をきくことで視野が広がり、具体化された気がします。

私の場合は地元の延岡市の単位でみたときに、全国と比較しても在宅医療のシステム構築が直近の課題でしたので迷いなく開業に踏み切れました。

今後はゲネプロのような教育体制強化や医師のワークライフバランスの支援などが延岡市や宮崎県の単位でおこなっていければと考えています。

メッセージ

プログラム応募に迷っている先生方にメッセージを

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私と同じように幼少期や学生時代からへき地医療に夢を持っている方もおられるかもしれません。しかしその夢は医師として年数を重ねたり、家族の制約が出てくる中で普通は薄れていきます。ゲネプロの魅力はそこに社会的なサポートを受けながらもう一度、夢に挑戦できることです。

私自身、知識や手技などの教育的な支援から、研修生のメンタルヘルス、家族ケアにも気を配っていただけたことはとてもありがたかったです。また、ゲネプロに集まる先生たちはキャリアや年齢、今後の進路も全く異なるのでその後の医師生活にも良い刺激をもらえます。おそらく一生の繋がりができると思います。

悩まれている先生がいたらぜひ挑戦していただき、研修中、そして卒業後も一緒に日本や世界の地域医療に関わっていければ嬉しいです。

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ゲネプロの研修プログラム

Rural Generalist Program Japan : RGPJ